『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』こいしゆうか著
[レビュアー] 読売新聞
今でこそ原稿中に「散りばめる」とあると、直した方が良いとピンと来るが、前まではその理由も含め、まるで分かっていなかった(正しくは「鏤(ちりば)める」。ひらがなにすることが多い)。
本書は、某社に名前が似ている出版社「新頂社」の校閲部が舞台。部員の目を通した「校閲というお仕事」の紹介漫画だ。作中、新入社員が、「洒落(しゃれ)」が正しく「酒落」は誤りと教えられ、「生きてて初めて知ったんですけど!!」と叫ぶ場面がある。私も気づいたのはずいぶん後だった。人のことは全く言えない……。
こう書くと、校閲部員は日本語の間違いだけに対処しているように誤解されそうだが、必要に応じて、作品全体の年表を作るなど、事実関係に矛盾がないかも調べ上げ、疑問点があれば指摘する。編集者はよく作者・筆者の伴走者に例えられるが、校閲部員も負けず劣らず伴走者なのだ。あなたが日々読んでいる本も、この記事も、各出版社・新聞社の校閲部員なしでは成り立たないのである。(新潮社、1265円)(十)