『ヴァギナ』
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女性器は脳とつながっている
[レビュアー] 鈴木裕也(ライター)
男性と女性の性感の違いは生殖器周辺の神経網の配線による。男性の陰部神経の分布は単純で画一的だが、女性のそれは非常に複雑で変化に富んでいる。さらに、女性の陰部神経は太く骨盤神経とつながっており、骨盤神経は脊髄と直接つながっている。つまり、ヴァギナと脳はつながっている――。骨盤神経障害で体調を崩し、専門医を訪ねた著者がその事実を知って驚くところから本書は始まる。
国際的ベストセラー『美の陰謀 女たちの見えない敵』で世界的フェミニストの地位を不動のものとした著者は、これをきっかけにして「ヴァギナとは何か」という謎に挑む。そして最新の脳科学や内分泌学、文学・歴史や文化・宗教、さらにはインドのタントラによる「女性の聖なるスポット」のマッサージまで、ヴァギナに関わるあらゆるジャンルを調べ、体験し、衝撃の真実に辿りつくまでをまとめたルポルタージュである。
なかでも、女性のオーガズムが創造性と深く結び付いているという体験的直観を取材によって確かめていくくだりは出色だ。ヴァギナが脳の一部として働くことを確信した著者は、「あなたが女性としてすばらしいセックスを求めてドーパミン系を最大限にはたらかせれば、あなたの脳は高まったエネルギーと集中力を毎日の生活や、いまがんばっていることにもそそいでくれる」と断言する。そしてそこからセクハラや女性解放など、フェミニストとして関わってきたテーマを「ヴァギナ」という視点から考え直していく。特に、言葉によるセクハラが、なぜヴァギナにとって悪いストレスになるかについて書かれた部分は男性必読だ。
そのように「ヴァギナ」を探る旅を続けた著者は、結論として「女神の身じたく」の必要性を説く。これまでのフェミニズムのモデルでは達成できなかった、女性の真の幸福と満足に到達できるとまで言う。ではその「女神の身じたく」とは何か――。ここでは書かないが、最新脳科学やタントラという古来の智恵でも示されている、女性の性と感情の幸福のために必要なことなので、ぜひ読んでほしい。カップルが、すれ違うことなく愛を深めるための参考書となっていることは保証できる。