ほめると子どもはダメになる [著]榎本博明

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ほめると子どもはダメになる

『ほめると子どもはダメになる』

著者
榎本 博明 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784106106477
発売日
2015/12/17
価格
858円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

ほめると子どもはダメになる [著]榎本博明

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 危険な新書です。叱らずにきた親は不安になり、下手に叱ってきた親は間違った自信をつけかねない。さらに、この「親」は舅・姑、教師、指導者、上司、その他いろいろに置き換え可能だから影響は拡がる。

 ただし、このリスクが発生する相手は、題名だけ(あるいはエエ加減な内容紹介まで)しか見聞きしない非読者が大半。中身をちゃんと読めば、教育心理学者の著者の言い分は褒め育ての全面否定でもなければ叱り育ての全面肯定でもないことは明確なのでね。

 この国の子供は自己肯定力が弱いから叱らず褒めて自信をつけさせようなんて取り組みの結果、批判試練重圧逆境に弱い若いモンが大量生産されてます、というのが、この本の前提その1。オーベーじゃ親も教師も頻繁に上手に褒めてるよってのは表層だけの話で、人間同士の密着度が元々高いニッポンとは土台が違います、というのがその2。

 躾ける側と躾けられる側の関係から、褒めること叱ることのプラスマイナスまでが把握できるゆえ、有益な新書です。続編として『叱る技術』『褒める技術』も出してほしいくらい。

 が、それはまっとうな読者にとって。我が振り直さず目下を叱りたがる馬鹿な親舅姑教師指導者上司さらには経営者役人政治家あたりに有益な具合に誤用される危険があるほど、やっぱりタイトルは強力。子供は部下は国民は叱らなきゃとか唱え出す連中にご用心。

新潮社 週刊新潮
2015年1月21日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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