産経新聞編集長、蔭山実が読む『危険な道 9・11首謀者と会見した唯一のジャーナリスト』 テロの背後にあった真実

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危険な道

『危険な道』

著者
ユスリー・フーダ [著]/師岡カリーマ・エルサムニー [訳]
出版社
白水社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784560084885
発売日
2016/02/19
価格
2,052円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

産経新聞編集長、蔭山実が読む『危険な道 9・11首謀者と会見した唯一のジャーナリスト』 テロの背後にあった真実

[レビュアー] 蔭山実(産経新聞編集長)

 2001年9月11日火曜日、米中枢同時テロに米国内で遭遇した衝撃は忘れることができない。ニューヨークで大惨事を目の当たりにしたわけではなくとも世界の歴史を変えたテロである。背後にあった真実を知りたいという思いが消えることはなかった。

 その真実にひとり迫ったのがカタールの衛星テレビ局アルジャジーラの敏腕ジャーナリストだ。発端は02年4月、携帯電話に突然かかってきた謎の通告。テロから1年の番組制作に特別なものを提供することができる-。その指示に従ってパキスタンに向かうと、9・11を首謀したという国際テロ組織アルカーイダの幹部が待ち構えていた。

 「偶然に頼るヘタな脚本で作られた劣悪な映画」のようだったと記すが、そんなことはない。アルカーイダに迫る緊張感は、映画「インサイダー」でアル・パチーノ演じるジャーナリストが中東での極秘取材に臨む場面に劣らないものがある。同時に、アルカーイダの用意周到な手法に嘘や罠(わな)ではないかと不安を感じながらも慎重に裏を読んで渡り合っていく姿はジャーナリストのかがみといえよう。

 カメラを前に首謀者が語った犯行の経緯は大スクープとなった。だが、取材の価値はそれだけにとどまらない。首謀者の素顔、計画を立案・変更した背景-。それらを鋭い観察力と洞察力で見極めて記録したことは、テロとの戦いが続くいまこそイスラムのテロリストの真の姿や思考回路を知る貴重な資料となるはずだ。訳者の正確な文章がその一部始終を明解に伝える。

 02年といえば、評者もイラク戦争を前に秋からイスラマバードに駐在し、アフガニスタン、中東へと取材に乗り出したころ。その一方で、アルジャジーラの記者が世界を揺るがす取材を命がけで行っていたとは、14年近くたっても身が引き締まる思いがした。

 幕を開けたばかりの21世紀を象徴した9・11。その経緯にはいまも誤解が残る。作家フレデリック・フォーサイス氏はそれを解こうとするかのように小説でテロの背後に迫ったが、その先をさらにうかがい知る貴重な一冊である。(ユスリー・フーダ著、師岡カリーマ・エルサムニー訳/白水社・1900円+税)

産経新聞
2016年2月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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