『50歳からの出直し大作戦』
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「50代こそ最強」と言い切れる理由
[レビュアー] 楠木建(一橋大学教授)
(1)滑った転んだをさんざん重ねてきて、(2)自分の弱みをイヤというほど自覚し、つまりは(3)自分の強みも知り抜いており、(4)世の中がそうそう自分の思い通りにならないという諦観と、(5)ま、どうにかなるさという楽観を併せ持ち、だからこそ(6)自分の土俵に腰を据えて、(7)真摯に社会での役割を果たそうとし、(8)世事の知恵と(9)それなりの人脈も持っており、(10)体力はまだまだ十分で、(11)子供も親の手を離れているから、(12)リスクも取れるし、(13)たとえ失敗してもニヤリと笑って受け止められる。
考えてみると、こうした50代の傾向と特徴は起業をするのにやたらと向いている。出口治明『50歳からの出直し大作戦』は、60歳で起業した著者が50代で起業した6人と、人生と仕事について語った対話集。50代こそ最強、「人生の黄金期」と著者は言い切る。
上場企業の経営者からネットのコイン商まで、商売のスケールはさまざまだが、タイトルに反していずれも「出直し」という感じがない。自然体で無理がない。人生の流れの中で起業という選択に行き着いている。
若者に対する中年の絶対的優位がひとつだけある。それは、中年はかつて若者だったが、若者はまだ中年を経験していないということだ。生きのいい若者のITベンチャーも素晴らしいが、本書は人生半ばを過ぎた起業ならではのコクのある味わいがある。