京都がきらい! 洛外出身者が「京都人のいやらしさ」をぶちまけた一冊がベストセラーに
テレビ・ラジオで取り上げられた本
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- 京都ぎらい
- 価格:836円(税込)
5月8日NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」に『京都ぎらい』(朝日新聞出版)の著者井上章一さん(61)が出演した。井上さんの歯に衣着せぬ京都洛中への物言いに対し、聞き手の高市佳明アナウンサー(43)も苦笑しながらのインタビューとなった。
■新書大賞受賞作
『京都ぎらい』は「新書大賞2016」大賞を受賞。現在21万部のベストセラーになっている。著者の井上さんは京都にある国際日本文化研究センターの教授で現在は宇治市在住。育ったのは嵯峨だという。井上さんはまず「洛中にあらずんば京都にあらず」という考え方が京都には根付いており、若いころから何度も公然と京都人(洛中の人々)から洛外に住む自分は下に見られ、屈辱を味わってきたと振り返った。
■エラそさのピラミッド
井上さんが大学時代、町屋の研究に行き、その家の主である著名な著述家に出身を聞かれた。嵯峨から来たと答えると、その主は「昔、あのあたりのお百姓さんが、うちへよく肥(糞尿)をくみに来てくれた」と初対面の井上さんに言い放ったという。
さらにそのことを西陣生まれで国立民族学博物館館長などをつとめた著名な学者に、「あなたも嵯峨を田舎だと見下してらっしゃるんですか」と尋ねると、彼はよどみなく「それはあたりまえや」と言い放った。「昔は嵯峨の言葉遣いを馬鹿にし、真似てからかっていた」と初対面の館長が公然と語ったという。
そしてその話を新町御池で生まれ育った友人に言うと、「西陣風情のくせにえらいエラそうなんやな」とまたもやあからさまに見下したという。井上さんはこの町の「エラそさのピラミッド」は奥が深いものなんだと感じた、と当時を振り返った。
■差別をして当然
次は井上さんが趣味のプロレスを見に行ったときのエピソードだ。京都府出身のプロレスラーがKBSホールに凱旋し、「京都に帰ってきました!」とマイクアピールをした。それに対し野次が飛んだ「お前なんか宇治やないか。宇治のくせに京都に帰って来たと言うな」。その発言を聞き、学者から一般の市民に至るまで、地域差別をして当然、する権利があると考えている京都人とは、金輪際精神的な繋がりは持つまいと思ったという。
■天狗になった京都人
井上さんは自分が京都出身だというと、京都を麗しく描いてくれと、自分に依頼をしてくる東京の出版社にも責任の一端はあると語る。「京都人は『どこの雑誌でも困ったら京都特集だ』と鼻をうごめかせ、天狗(増長する)になってゆく。東京がべんちゃら(お世辞)をしてくれるおかげで、彼らが洛外を見下すことが正当化され、私達が迷惑をこうむるのだ」と主張した。
■肥によって育てられた
しかし井上さんは自身も京都人と出会うことにより、周辺に行けば行くほど見下されて当然だという意識に汚染されてしまい、嵯峨より田舎の亀岡に対し、下に見る気持ちが芽生えてしまったと告白した。「洛中の人間と付き合うおかげで私もいやらしい人間の一翼を担うようになってしまった」と嘆いた。そして自分の書くものに「臭み」や「よどみ」があり読み応えがあるのは、洛中のいやらしい人々が撒いてくれた「肥」のおかげだと自虐的に語った。
NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」は毎週日曜6時40分ごろに放送。コーナーはNHKのウェブサイト(http://www4.nhk.or.jp/r-asa/340/)でも聞くことができる。
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