蜷川幸雄逝去で再注目 シェイクスピアの正体を知っていますか?

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 翻訳家の鴻巣友季子さんが5月19日NHKラジオ第1の「すっぴん!」のコーナー「本、ときどきマンガ」に出演し、『シェイクスピアの正体』河合祥一郎[著](新潮社)を紹介した。

■追悼・蜷川幸雄

 鴻巣さんは『シェイクスピアの正体』を紹介するにあたり、コーナー冒頭で5月12日に亡くなった蜷川幸雄さんの功績に触れた。世界最高峰のシェイクスピア劇団であるロイヤル・シェイクスピア・カンパニーにも演出家として招かれたこともある蜷川さんの訃報を聞き、「呆然としました。画期的な活躍をされた人。日本中にショックが走っている」と悼んだ。

 そして今シェイクスピアに注目する理由として、「シェイクスピアはいつの時代でもとびきり新しい」と語った。また時代や場所を移し換えても新たな息吹を得る、常に新しくて普遍性を持つ作家だとも評した。劇中で取り上げられるテーマは権力争い、縄張り争い、財産争奪戦、グル-プの派閥の対立や駆け引き、不倫、嫉妬劇。現代の社会や企業のドラマに置き換えても納得して見られる。「人間の目がくらむ欲は古今東西、洋の東西変わらないんだな」とその普遍性を解説した。

■シェイクスピア候補が7人?

『シェイクスピアの正体』の表紙にはシェイクスピア候補7人が描かれている。“候補”とはどういう意味なのか。実はシェイクスピアには別人説が唱えられており、その候補7人が描かれているというわけだ。著者の河合さんはシェイクスピア学の第一人者。河合さんは別人説を積極的に支持しているわけではないが、これだけ言われているのであれば、検討してみようとこの本で取りあげた。鴻巣さんは「もしつきとめられたらノーベル賞級の研究」とこのテーマの重要性を解説した。

■別人説・複数説が唱えられる背景

 シェイクスピアは裕福な家の出身ではなかった。田舎の教養のない一青年が宮廷御用達の劇作家になりあがり、王族や貴族を題材にした傑作を次々に書けるはずないんじゃないか、という疑問が昔からあったという。そしてその経歴にも謎の空白期間が7年半もあり、それも疑惑を呼ぶ一因だという。またボキャブラリーが異常に豊富だったという。当時の一般の人が使う言葉は3千~4千語、シェイクスピアは3万語といわれている。そのような驚異的な語彙を育て、支えた蔵書が残っておらず、突然天才があらわれたようにみえる。そのため別人説のみならず、複数の人間が共同で使用していた名前という説もあるという。

■浮かび上がる親しみやすいシェイクスピア

 鴻巣さんは同書で取り上げられている何人かのシェイクスピア候補をあげながら解説し、同書にはミステリーのような面白さがあると語った。著者の河合さんは最終章で別人説に決着をつけるわけではないが、ひとつの答えを出している。シェイクスピアというとハードルが高く感じるが、この本を読むとシェイクスピアの親しみやすい人物像が浮かび上がってくるという。最後に鴻巣さんは「当時のエリザベス朝の時代背景もわかるし、入門編としてもよい、二重三重に楽しめるので超オススメ」と締めくくった。お笑いコンビ・麒麟の川島明さん(37)も「別人説しらんかったなぁ。めっちゃおもろそうやん」と興味を示していた。

すっぴん!」はNHKラジオ第一放送にて月曜から金曜8:05から日替わりのパーソナリティーで放送中。川島明さんは木曜日を担当している。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年5月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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