80年代に隆盛を極め、封印されたオリジナルビデオアニメ(OVA)の墓標を掘り起こす

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 オリジナルビデオアニメ誕生から30年以上が過ぎた現在、日本はアニメ大国として世界に名を轟かせている。「今期はどのアニメがいい?」などという会話が一般的に交わされるようになり、アニメファンの裾野は広がり、作品数も既存メディアに加えてネット配信も加わり増加の一途を辿っている。一方、OVAは本数的に減少し、内容的にもスピンオフものが中心で、80年代と比べると隔世の感がある。作品数が膨大であるがゆえに、“ディグる”ことが困難になり、アニメファンの世代間における文化の断絶が起きているように思える。今の作品をチェックするだけで大変なのに、過去の、しかも30年近く前の作品をわざわざチェックする若いアニメファンは少ないだろう。ましてや、DVDやブルーレイになっていない作品も多く、ビデオやLDというハード自体が製造中止となった滅んだメディアである。しかし、そんな滅んだとカテゴライズされている作品の中にはとんでもないエナジーが秘められているのである。それが2018年2月にパンク専門誌「MOBSPROOF」編集部が編集し発売された『オリジナルビデオアニメ(OVA)80’s テープがヘッドに絡まる前に』である。

 当時、若きクリエイターたちが有り余る才能と情熱を傾け、既成概念やこれまでのアニメ界の枠組みを壊して制作したOVA作品群は、まさにパンクに通じる荒々しいエナジーに満ちたものが多いのである。今も新作が発売されたり、グッズが発売されている息の長い作品もあるが、逆に中途半端で終わった作品、志半ばで終了してしまった作品も多いし、そんな作品こそ愛おしくもあったりする。このまま葬り去られるには惜しい作品を、“OVA墓場”から掘り起こしたのが本書である。紹介している作品を観てみて、中には「失敗した!」と思われる方もいるかもしれないが、それも数年後には飲みの場での笑い話のネタになるかもしれない。なぜなら、時代が変われば視点が変わる。当時、“クズ作品”とこき下ろされたものも少なくはなかったが、今の観点で観ると面白い…というか許せるし、“アリかもな”と思わせる作品も多いからだ。本書を読んで、ひとりでも多くの人が気に入った作品に辿り着いてもらえたら幸いだ。わずかでも人の記憶に残れば、その作品が死ぬことはないのだから。これまでOVAに関わってきた人たちに、最大級のリスペクトと感謝の気持ちを捧げた一冊だ。

インタビュー
奥田誠治(『ドリームハンター麗夢』など)/平野俊弘(『戦え!!イクサー1』など)/大張正己(『破邪大星ダンガイオー』など)/菊池通隆(『冥王計画ゼオライマー』など)/矢尾一樹(『超獣機神ダンクーガ』など)/大村安孝&三浦亨(AIC)
/上坂すみれ

執筆陣
吉田正高/伴ジャクソン/植地毅/ロビ前田(赤犬)/多根清史/キムラケイサク/馬場卓也/かに三匹/坂本技師長/中村実香/ホシノコ・コウ/うてなゆき(ネムレス)/松原弘一良ほか

2018年6月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
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