第29回ミズノスポーツライター賞が発表 フィギュアスケートとサッカー本の3作が決定

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 第29回ミズノスポーツライター賞が6日に発表され、最優秀賞に鈴木ふさ子さんの『氷上のドリアン・グレイ―美しき男子フィギュアスケーターたち』(アーツアンドクラフツ)、優秀賞に田村明子さんの『挑戦者たち 男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)と長束恭行さんの『東欧サッカークロニクル』(カンゼン)の受賞が決定した。

 最優秀賞を受賞した『氷上のドリアン・グレイ』は、男子フィギュアスケーターたちの競技人生をインタビューをまじえて辿るスポーツ・ノンフィクション。羽生結弦、高橋大輔、ブライアン・ジュベール、トマシュ・ヴェルネル、ジョニー・ウィアーの活躍と魅力を描く。

 著者の鈴木さんは、大学の講師を務めながら、2008年よりフィギュアスケート専門誌で取材。著書に『オスカー・ワイルドの曖昧性』(開文社)、『三島由紀夫 悪の華へ』(アーツアンドクラフツ)、共著に『比較文学の世界』(南雲堂)、『ラヴレターを読む――愛の領分』(大修館書店)がある。

 優秀賞を受賞した『挑戦者たち』は、フィギュアスケートを25年に亘り取材し、会見通訳も務める田村さんが、羽生結弦、宇野昌磨、ハビエル・フェルナンデス、ネイサン・チェン、パトリック・チャンなどの進化の過程を追い、スケーターたちの素顔に迫った一冊。

 著者の田村さんは、1993年からフィギュアスケートの取材を始め、長野五輪では運営委員として海外メディアを担当。以降、日米バイリンガルの技術を生かしてソルトレイクシティ、トリノ、バンクーバー、ソチ、平昌とすべての冬季五輪を現地取材。「Number」「Ice Jewels」などのスポーツ誌に寄稿を重ね、国際大会での会見通訳も務める。著書に『氷上の光と影 知られざるフィギュアスケート』『パーフェクトプログラム 日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』『銀盤の軌跡 フィギュアスケート日本ソチ五輪への道』(いずれも新潮社)、『氷上の美しき戦士たち』(新書館)などがある。

 もう一つの優秀賞受賞作の『東欧サッカークロニクル』は、クロアチアからアイスランドまで、東欧を中心に16の国と地域を巡り、旧共産圏の知られざるサッカー世界を取材したルポルタージュ。東欧を中心に10年以上にわたって取材を続けてきた長束さんが、体当たり取材と迫真の写真で解き明かす。

 著者の長束さんは、1973年、名古屋生まれ。同志社大学経済学部卒業後、銀行に勤務するも、1997年に旅行で訪れたクロアチアで、ディナモ・ザグレブの試合に感銘を受けて帰国後に退職。その後、クロアチアと周辺国の観戦旅行を繰り返して、2001年にザグレブ移住。大学でクロアチア語を会得し、旧ユーゴ諸国のサッカーを10年間にわたって取材。2011年には拠点をリトアニアに移して4年間におよぶ取材を行う。訳書にイビチャ・オシムによる「日本人よ!」(新潮社)、著作に「旅の指さし会話帳 クロアチア」(情報センター出版局)、共著に「ハリルホジッチ思考」(東邦出版)がある。

 ミズノスポーツライター賞は、スポーツ文化の発展とスポーツ界の飛躍を期待し、これからの若手スポーツライターの励みになる事を願い制定された賞。スポーツに関する報道・評論およびノンフィクション等を対象として、優秀な作品とその著者を顕彰する。第29回の選考委員は、河野通和さん、上治丈太郎さん、杉山茂さん、ヨーコ・ゼッターランドさん、高橋三千綱さん、水野英人さんの6名が担当した。

 昨年は、最優秀賞は受賞作なし。優秀賞に中南米野球界の裏側を描いた中島大輔さんの『中南米野球はなぜ強いのか』(亜紀書房)と背番号という数字にまつわる、プロ野球選手たちの数奇な人生を追った佐々木健一さんの『神は背番号に宿る』(新潮社)が受賞。過去には毎日新聞社 五輪取材チームによる『バルセロナ五輪 連載企画報道』(第3回)、中村計さんの『甲子園が割れた日-松井秀喜5連続敬遠の真実』(第18回)、布施鋼治さんの『吉田沙保里~119連勝の方程式~』(第19回)などが受賞している。

Book Bang編集部
2019年3月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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