正しい腕振りが、走りの推進力をアップする! 定説がなかったマラソンの腕振りで注意すべき3つのこと

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腕は「前に振る意識」と「後ろに引く意識」、どちらが正しい? それとも…

ランニングするには足の筋肉が大切と思って筋トレしたり、足のストレッチやケアをする人はいても、足と腕の連動こそ大切と認識している人は多くはいません。腕振りのコツを掴めば必ず楽に速く長い距離を走れるようになります。

マンガ家みやすのんき氏が上梓した『マラソン腕振り革命 ターンオーバー理論で驚くほど推進力がアップする!』を 一部抜粋、5年連続して現役サブスリーを達成している市民ランナーでもあるみやす氏が重視する、腕振りで気を付けなくてはいけない点を3つ挙げてもらいます。

(1)大きく強く振れば速くなるわけではないことを理解する

ランニングは足を前後に振り回す全身運動です。足はカラダの中でも重量と体積を大きく持つパーツです。腕振りの大きな役目は足に合わせた相対的な動きをすることによって、着地衝撃や胴体のねじれを相殺して制振することです。

だから「腕を強振する=速く走れるようになれる」ではありません。短距離走のスタート時には前後に大きく腕を振りますが、 それは加速の局面だから。ほぼ等速で走るマラソンで大きく腕を振り続けることはずっと加速し続けようと頑張っているのと同じなので、足の動きをサポートするどころか大きくエネルギーを消耗します。

駅伝やマラソンで「腕がしっかり力強く振れていい走りですね!」と選手を褒める解説をよく聞きますが、果たしてそうなのでしょうか。世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ選手をはじめとしたアフリカ系のランナーたちは、みな腕をコンパクトに抱え込むように振って走る経済性を高めています。


腕振りの違いは、エネルギー消費だけでなく、足回しにも大きく影響を与える。

(2)ターンオーバーの局面を意識する

ランナーあるあるで腕は前に振る意識を持つ方がいいのか、後ろに振る意識を持つべきなのか見解が割れます。この質問をするとランナーの意見はおおよそ半分に分かれるし、記録もそう変わりません。記録に差があれば議論に決着がついているはずですから、どちらの感覚も問題ないのです。実はそれらより大切なことがあります。

陸上競技におけるランニングで大切なポイントにシザースという動作があります。足捌きは両足をひろげてストライドを伸ばすのではなく、逆に挟み込もうとすることによって効率よく速く走れるようになります。

同じく腕振りもシザーズの動きが大切なのです。つまり腕は前後にひろげるように振るのではなく、ひろがらないように閉じる意識で振る。「肘を大きく強く引くことによって足が強く前に引き出される、膝が高く上がる」という説明がなされることがありますが、それではひろげる意識に傾いてしまい間延びした走りになりやすいのです。そもそも腕と足の筋肉は一本でつながっているわけではないので、ひねりの反動でゴムやバネのように弾性エネルギーが高まることはありません。意識的にひねってはダメで、むしろねじれそうになる胴体をねじれないようにする。つまりキレよく胴体を使うには閉じる意識が大切になってくるのです。

「閉じる意識」といっても窮屈に振れというわけではありません。私は腕振りは前に振るでも後ろに引くでもなく、「ターンオーバー」といって前に振り出す時にもう後ろに引く準備をする、瞬間的に「切り返す、反転する」局面に重きを置くべきだと考えています。

(3)腕振りと足回しは必ずシンクロさせる

腕振りと足回しは細かい部分までお互いに影響を与え合っています。足は地面への着地というイベントがあり、地面に瞬間的に真下に力を伝えるといった作業を担います。前方へ重心移動するのは胴体、そしてそれらをタイミングよくサポートして推進力につなげるのは腕振りの仕事なのです。両者はきれいにシンクロすると地面から受け取った反発を効率よく前進するエネルギーに変換することができます。これが腕振りの第二の大きな役目です。

逆に誤った腕振りは、誤った足回しにつながります。余計な動作の入った腕振りは、余計な動作の入った足回しになります。疲れるばかりでもどかしいほど前に進んでくれません。正しい「ターンオーバー」を身につけ、正しく腕振りと足回しをシンクロさせることが、楽に速く長く走るには不可欠なのです。

マラソンにおける腕振りは、短距離走ほどスピードが高くないために個人の癖が入り込む時間的余裕があります。ゆえにキチンとした理論が提唱されてきませんでした。しかし人体の筋肉や骨にスポットライトを当てて確認すれば自ずと最適な動かし方が導かれます。ランニングフォームを変えるには筋トレやドリルなど動き作りよりまず意識改革が大切です。『マラソン腕振り革命 ターンオーバー理論で驚くほど推進力がアップする!』(実業之日本社)に書かれていることを実践するだけで驚くほど走る経済性が向上します。サブスリーをめざすランナーだけでなく、初心者が読んでも大変参考になり飛躍的なタイムアップにつながるでしょう。

みやすのんき
1962年生まれ。漫画家。『やるっきゃ騎士』(集英社/月刊少年ジャンプ)にてデビュー。『冒険してもいい頃』(小学館/週刊ビッグコミックスピリッツ)など。近年はランニング、ウォーキングなどスポーツや健康関連の実用書も出版。趣味は古墳、遺跡巡り、食べ歩き。フルマラソンの自己ベスト記録は2時間53分。

実業之日本社
2021年2月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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