「能ある鷹は爪を隠す」には本当の意味があった?「易経」研究家が教えるうまくいかない時の対処法

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※写真はイメージです

経営者や研究者、医師、スポーツ選手……名だたるリーダーたちが愛読する中国の古典『易経(えききょう)』。あらゆる事物の変化に対応できる先人の叡智であり、人々の喜怒哀楽に寄り添い、「いかに生きるか」を示してくれる人生のバイブルです。時代を超えて読み継がれてきた名著のエッセンスを、易経研究家・小椋浩一さんの実体験が盛り込まれた著書『人を導く最強の教え『易経』 「人生の問題」が解決する64の法則』からご紹介します。 
(以下は『人を導く最強の教え『易経』 「人生の問題」が解決する64の法則』を再編集したものです。)

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この世界のすべてから学べ

『易経』は、いま流行の成功法則に比べたら、非常識な考え方かもしれません。しかし、紀元前からずっと語り続けられ、先人たちが学びを得てきたノウハウです。「時流に乗る者は時流により滅ぶ」という真理の裏で、3000年もの歴史の波を経て生き抜いた『易経』には、決してブレないものがあります。

『易経』の教えをしっかり理解し、正しい手順で実践したところ、驚くべき結果が待っていました。筆者の毎日も、学ぶ前と後ではまったく違うものになりました。仕事や家庭など、人生全般における悩みや迷いが消え、1つひとつが納得のいくものとして輝きはじめたのです。これは、10年以上『易経』を学び続けてきた筆者の実体験です。

本当だろうか……あなたがそう思うのも無理はありません。もちろん、考え方を変えただけで、急に運が良くなるわけではありません。タネ明かしをすれば、幸運と不運の扱い方を変え、自問自答してあらかじめ納得のいく答えを出せるようになっただけです。でも、それだけで私たちの人生は大きく変わる。それが『易経』の説く内容です。

『易経』の準備した問いに対して自問自答する習慣をつければ、これから起こることに対してあらかじめ準備ができます。紀元前以来の先人たちと同じ失敗を繰り返すことがなくなるとともに、先人たちが獲得した成功パターンも再現できるようになりました。

歴史上でも、『易経』に学んだ先人たちが周りの人々を幸せに導き、それを通じて幸せな人生をまっとうしました。「この世界のすべてから学べ。目前の自然から学べ」という『易経』の揺るぎない教えは、時代の流れや環境に左右されない「人類のブレない軸」であり、「自分のブレない軸」を見つけるためのヒントになるはずです。

ここでは、困難や苦境に直面した時、心に留めておきたい教えを1つご紹介しましょう。

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地火明夷[ちかめいい]
……賢明な人が傷つき破れて、日の目を見ない時。
  困難に耐えて貞正(ていせい)を守るのが良い、の意。

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何をやってもうまくいかない時は誰にでもあるものです。自分より努力の足りない人にチャンスを奪われたら悔しいですし、ましてや邪(よこしま)な動機を持った人のほうが取り立てられれば恨みたくもなります。でも、そんな時こそ運を天に任せ、じっと我慢すべきだと、『易経』は説きます。

「能ある鷹は爪を隠す」の本当の意味

「おごれるものは久しからず」と言われるとおり、その人が取り立てられることが間違いであるなら、待てばかならず破綻します。決して、むやみにジタバタしたり、才を頼んで小細工に走ったりしてはいけません。「策士策に溺れる」という言葉どおり、そういった往生際の悪さはほとんど裏目に出ます。

「能ある鷹は爪を隠す」ということわざは、謙虚でいたほうが得だとか、必殺技は隠しておいていざという時に効果的に使えなど、損得勘定で解釈されることが多いですが、もともとのメッセージは、苦境においては自分に自信を持ち「時を待て」ということなのです。

小細工せずに時を待つ

それに関するたとえ話としては、中国で暴君として語られることの多い「殷の紂王(いんのちゅうおう)」の時代(紀元前1100年ごろ)、箕子(きし)という賢臣が狂人の振りをして難を免れた例が挙げられています。

日本人にとっては『忠臣蔵』において主君の無念を晴らすべく、仇討ちの意志を隠し、遊び呆けて見せた大石内蔵助のほうが、なじみがありますね。

また、後に首相にまで上りつめる広田弘毅が、外交官時代に左遷された際、次の歌を詠んで任地に赴いた、という逸話にもぐっとくるものがあります。

「風車、風が吹くまで昼寝かな」(広田弘毅)

明けない夜はありません。かならず夜明けはやってきます。あなたが正しく、強くある限り。

苦難にあっても、いや苦難の時だからこそ、「才をひけらかさず、正しく謙虚な態度を貫ける」というのが「大人(たいじん=立派な人)」の証であるとともに、成功の秘訣なのです。

小椋 浩一(おぐら こういち)/易経研究家
1965年、名古屋生まれ。某電機メーカー経営企画部プロジェクト・マネジャー。名古屋大学大学院経営学博士課程前期修了。早稲田大学商学部卒業後、上記電機メーカーに入社。海外赴任を経て会社を「働きがいのある会社ベスト20」に導くが、キャリアの絶頂期に新規事業で大損失を出し居場所を失う。その後『易経』との出会いで人生観が180度変わる。現在では全社横串の次世代リーダー育成の傍ら、社内外でセミナーや講演を多数行っている。

小椋浩一/易経研究家

日本実業出版社
2023年9月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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