“スマホ依存症”のやす子が「100時間スマホなし」の社会実験をした結果…SNSでメンタルがダメになるこれだけの理由

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やす子が「100時間スマホなし生活」を強いられたら?


今どきの若者らしくスマホが手放せないやす子さん(25)

 2月22日に放送されたテレビ番組「社会実験バラエティー『マル日後にわかるホント』」(日本テレビ系)をご覧になって、他人事ではないと感じた方も多いのではないだろうか。

 番組の序盤で取り上げたのは「スマホ依存症」の問題。“社会実験”の対象は、お笑い芸人のやす子だ。

 1日10時間以上もスマホに接しているという彼女には、依存症気味という自覚がある。ついエゴサーチをしてしまうだけではなく、Xで寄せられた声すべてに「いいね」を押すといったサービス精神を発揮していることも、長時間使用の原因となっているようだ。

 そんな彼女に、番組側は「100時間スマホなし生活」を課す。その結果、普段は気にもとめなかった風景に目を留めたり、食事にも気を使うようになったり、と良いこともあるのだが、一方で「スマホに触りたい!」と叫ぶという明らかな禁断症状も…。禁断症状のあたりは、芸人ならではのリアクションという感じもするものの、全体として情緒が不安定になっていく様を番組はリアルに紹介していく。

 その結果、「スマホなし生活」体験を経て、やす子はスマホとの適切な距離を取ることの重要さを知る――というわかりやすい展開が途中まで見られるのだが、興味深いのは番組が追加取材した直近の彼女の状況だろう。実は「スマホを使い過ぎていた」という反省はあっという間にどこかに消えて、すぐにもとに戻っていたことが判明した、というのがオチになっていた。

 彼女のチャレンジは、現代人にとっていかにスマホが生活の中心を占めているかを面白く示した“社会実験”になっていたといえるだろう。スマホからたった数日離れただけで「触りたい!」と叫ぶ姿はいかにも芸人らしく笑いを誘うものになっていたわけだが、一方で、自分だったらどうだろうかと考えた時に、ああはならないと自信を持って言える人は、どのくらいいるのだろう。

 やす子の場合は、不特定多数の人とつながること自体が仕事と直結している。対して、多くの一般人は、そこまでつながる必要はないのに、ついついつながり、それによって余計なストレスを抱えてしまっているのではないだろうか。そしてそれに気づいているのに、抜け出せないでいる、つまりは依存症に陥っているのではないか。

スマホが招くメンタル危機

 番組にも登場し、「100時間スマホなし生活」のためのアドバイスを送ったのが、『スマホ脳』の著者で知られるアンデシュ・ハンセン氏だ。スマホ依存の危険を説いた同書は世界的ベストセラーとなった。

 そのハンセン氏の新著『メンタル脳』(マッツ・ヴェンブラードとの共著、久山葉子訳)には、近年、特に若い世代のメンタルがスマホやSNSによってダメージを受けていると警鐘を鳴らしている。ハンセン氏の母国、スウェーデンでは、「ここ20年、不眠で受診する10代の若者が10倍に増えています」という。その大きな理由の一つが、スマホやSNSというわけだ。ハンセン氏の説は概ね以下の通りである。

――もともと人の脳は「他人と連帯すること」、つまり、つながりを得ることに幸せを感じるようにできていた。集団生活に歓びを感じないと、外敵に立ち向かえないし、生活を維持できないからだ。孤独でいるよりも、誰かとつながっていることに快感をおぼえるようになっていることになる。
 そうした脳の基本的な性質は変わっていない。しかし、一方で、技術の進歩により、必要以上に他人とつながるようになってしまった。これが深刻なメンタル危機の理由となっている――。

 ハンセン氏が説く「SNSがメンタルを下げるメカニズム」を詳しく見てみよう(引用は『メンタル脳』より)。

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アンデシュ・ハンセン(Anders Hansen)
1974 年スウェーデン・ストックホルム生まれ。精神科医。ストックホルム商科大学でMBA(経営学修士)を取得後、ノーベル賞選定で知られる名門カロリンスカ医科大学に入学。現在は王家が名誉院 長を務めるストックホルムのソフィアヘメット病院に勤務しながら執筆活動を行い、その 傍ら有名テレビ番組でナビゲーターを務めるなど精力的にメディア活動を続ける。『一流の 頭脳』は人口 1000 万人のスウェーデンで 60 万部が売れ、『スマホ脳』はその後世界的ベストセラーに。『最強脳』『ストレス脳』なども合わせた日本での同氏の著作は累計 110 万部を突破している。

マッツ・ヴェンブラード(Mats Wanblad)
1964年スウェーデン・ストックホルム生まれ。児童文学作家。

Book Bang編集部
2024年3月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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