「不意に涙が出そうに…」高嶋政伸が明かした“13歳の娘を暴行する役”への葛藤 インティマシーコーディネーターに支えられたNHK『大奥』の裏側
エッセイ・コラム
俳優の高嶋政伸さん(C)東宝芸能
昨年、NHKドラマ『大奥』で徳川家慶を演じた際の“怪演”が話題となった俳優の高嶋政伸さん(57)。高島忠夫・寿美花代夫妻の三男として生まれ、大学在学中に俳優デビューして以来、好青年から悪役までドラマや映画で様々な役を演じてきた。
その高嶋さんが、昨年最もハードだった役は『大奥』で演じた徳川家慶だと自身の連載エッセイで明かしている。自分の娘に幼い頃から性的な暴行を加える父親を演じる中で、「不意に涙が出そう」になったことも打ち明けた。
このハードな撮影現場で俳優らを支えたのが、日本にまだ2人しかいないという「インティマシーコーディネーター」だ。大反響があった『大奥』撮影の裏側と、2児の父親として加害者を演じなければならなかった胸の内とは――?
※この記事には性加害場面の撮影に関する記述があります。
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■出演条件は「インティマシーコーディネーター」を付けること
昨年はハードな役が続きました。何人もの愛人を囲い、人を殺めることもためらわない詐欺師。歯向かう者は消し、臓器ブローカーに死体を売り払う男。ショットガンで人を撃ち、手をナタで切り落とすサイコパスの連続殺人鬼。
中でも一番ハードだったのは、自分の娘に幼い頃から性的な暴行を加え続けている父親の役。そう、NHKドラマ『大奥』で演じた徳川家慶です。放送後、大きな反響をいただきました。
この作品は、まず台本を読んだ段階でストーリーがとても独創的なのが気に入りました。が、僕にとっても娘役の俳優さんにとっても心身ともにハードな現場になるのは明らかでしたので、お受けするにあたって僕は必ず「インティマシーコーディネーター」さんを付けてください、とお願いしました。制作サイドも最初からそのつもりでいらしたというので、それならばと、この難しい役に臨むことにしたのです。
インティマシーコーディネーターとは、2022年のユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされた、映画やドラマの撮影現場で性的なシーンや衣服をまとわないシーン(インティマシーシーン)を演じる俳優の身体や精神の尊厳を守りつつ、監督の求める描写も尊重し、現場を円滑に進めるサポートをする方たちのこと。例えば、台本に衣服を身に着けないシーンが書かれていたとしたら、撮影前に監督と俳優の間に入って、どこまで肌を露出できるか俳優に聞き、それを監督に伝え、互いに納得できる着地点へ導く。あるいはベッドのシーンなどの絡みをどう撮っていくか、撮っていけるのかを俳優や演出家と細かく打ち合わせ、安全安心に撮影を進められるように考えて下さいます。
アメリカでは、インティマシーシーンへの配慮はかなり前から行われています。1980年製作のホラー映画の傑作『シャイニング』では、主演のジャック・ニコルソンが自分の子どもに斧を振りかざして殺害しようとするシーンがありますが、ニコルソンと子役が同じ画面で絡む以外のカットは全て別撮りし、楽屋も遠く離して顔を合わせないようにし、かつ、出来上がった作品は、その子役が20歳になるまで見せてはいけない、という徹底した措置が取られていました。子役俳優が成人する前に見ると、トラウマになる可能性があると制作サイドが判断した訳です。
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