【話題の本】『カレー移民の謎』室橋裕和著

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■「インネパ」多角的に

カレーとナンの組み合わせを、手ごろな価格で提供する。10種類ほどあるカレーはスパイスをきかせすぎず、ナンは甘く柔らかく、サラダにはオレンジ色のソース。日本に4000軒とも5000軒ともいわれる「ネパール人経営のインド料理店」はなぜ増えたのか。アジア専門のジャーナリストが多角的に検証した。

共通するメニューは伝統料理ではなく、幅広い層の日本人の好みに合わせたものだ。移民が生きていくため、インドやネパールの食文化にこだわらず、知名度の高い「インド料理」として出す。こうした店の俗称「インネパ」を、著者はその柔軟性への敬意を込めて本書で使うとしている。メニューの源流を探し、在留外国人統計からネパール人が増加した歴史をたどる。母国からコックを呼ぶブローカー化した経営者や、彼らから搾取されるコックたちといった闇にも切り込む。カースト制度に根差す分業制が残るインド人にとってナン担当やカレー担当、掃除担当は兼任するものではないが、ネパール人は一人で何でもこなすという。

3月15日の発売後すぐ増刷が決まった。版元によると、「全国のどこにでもあるインドカレー店が、実は気になっていた」という反応が多く寄せられているそうだ。(集英社新書・1320円)

寺田理恵

産経新聞
2024年5月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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