新しい男性批評の誕生

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新しい男性批評の誕生

[レビュアー] 図書新聞

 「男の弱さとは、自らの弱さを認められない、というややこしい弱さなのではないか」。そんなややこしい男の生態=男の自己嫌悪(ミサンドリー)を批評的に解剖していく。といっても、著者の杉田がメスを入れるのは、自分以外の男ではなく、他ならぬ自分である。その手つきは、まるで麻酔をかけずに自身を開腹する医師のようだ。杉田自身の、性愛、労働、子育てなどの体験から得られた血の通った言葉で、モテない男もモテる男も知らず知らずのうちにまとっている鎧を静かに、丁寧に剥がしていく。奇妙で厄介極まりない「生きる」ということから目をそらさずにとことん付き合ってみよう。男たちへのエールは、どこまでも温かく優しい。新しい批評の誕生を予感させる一冊だ。(10・19刊、二三八頁・本体七六〇円・集英社新書)

図書新聞
2017年5月6日号(3302号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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