『戦国大名の危機管理』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
民衆の視点から戦国大名を捉える
[レビュアー] 図書新聞
「腹が減っては戦ができぬ」とはよく言うが、文字通りに解せば、そもそもその飯はどこからやってくるのか。武士ならば農民などの「民衆」ということになるだろう。ならば、領国の民に信頼されなければ戦など決してできない。本書は戦国時代に関東を支配した後北条氏三代目当主・氏康の領国経営から、中世~近世における「民衆」や「村」の役割や実像を浮かび上がらせる。ここで書かれている民衆たちはただ戦国大名に搾取されているわけではない。飢饉と戦争のなかで彼らがどのように生き、大名と対峙してきたか、また大名のほうもいかに民衆を大事にしながら統治してきたか、そこまで視野を広げて論じていく。近代国家のシステムは戦国の世にはまだないが、逆に封建国家にこそ、人としての政治家の起源を見てとることができるかもしれない。文庫化に伴い、合わせておよそ六〇頁もの論考七篇も収録。(11・25刊、二五六頁・本体八四〇円・角川ソフィア文庫)