男はみんな、ジョン・レノンや村上春樹になったほうがいい。主夫作家が書くイクメンBL『東京パパ友ラブストーリー』刊行記念インタビュー
インタビュー
『東京パパ友ラブストーリー』
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男はみんな、ジョン・レノンや村上春樹になったほうがいい。主夫作家が書くイクメンBL『東京パパ友ラブストーリー』刊行記念インタビュー
[文] Book Bang編集部
「おっさんずラブ」は一度も見たことがありません
昨年オンエアされた連続テレビドラマと言えば、男性同士のラブストーリーを描いた「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)を思い浮かべる方が多いのではないか。BL(ボーイズラブ)的な「萌え」要素は比較的少なく、どちらかと言えば少女漫画の影響を受けた世界観の中で、男女の恋愛と同様に「恋愛ドラマ」を描いたことによって、男女問わず多くの視聴者の共感を得た。出演俳優の写真集や関連書籍は飛ぶように売れ、今夏には映画化も決定している。
一方で、青山に住む落ち目の建築家が、同じ保育園に子どもを通わせるイケメンファンドマネージャーのCEOと恋に落ちるという、「おっさんずラブ」を彷彿とさせる男性同士の恋愛を描いた小説『東京パパ友ラブストーリー』(講談社)が話題だ。意外にも著者の樋口毅宏氏は「おっさんずラブ」を「一度も見たことがありません」という。
「執筆中、「『君の名前で僕を呼んで』(昨年ヒットした、男性同士のラブストーリー映画)の影響を受けましたか?」って質問を受けるんだろうなあと思っていたら、脱稿してゲラを校正している途中に編集担当から「おっさんずラブ」が流行っていると聞かされました。それ以降もちょっと怖くて見ていません」
主人公の建築家が「兼業主夫」という設定なのが今っぽい。彼の暮らしぶりや心の移ろい、そして男女逆転した妻との関係性の描写がリアルで、ラブストーリーとしてだけでなく、昔に比べたら増えてきたとはいえまだまだ少数派である「主夫」の知られざる生態を記した秀逸な読み物としても成立している。
男は人生の一時期、主夫を経験してみたほうがいい
それもそのはず、著者の樋口氏もまた家事育児と作家活動を両立する「兼業主夫」なのだ。育児エッセイ『おっぱいがほしい! 男の子育て日記』(新潮社)でも、自身の多忙な主夫生活について言及し、「主夫作家」として名を馳せている。
「妻よりも二桁以上多く、赤ん坊にミルクを作り、オムツを替え、保育園の送り迎えをし、ごはんを作り、公園に遊びに連れていく。買い出し、洗濯、掃除もろもろやっています。そういう人の視点を生かしたかった。
村上春樹がむかしエッセイで、『ジョン・レノンも僕もやったけど、男は人生の一時期、主夫を経験してみたほうがいい』みたいなことを書いてました。同感です。スーツを着て満員電車に揺られるとか、人生は1種類じゃない」
当事者だからこそ「男性同士の恋愛」「主夫」と一見関係なさそうな現代日本社会を象徴するマイノリティのコンボを矛盾することなく成立させ、「主夫のダブル不倫(しかも男性同士)」を説得力たっぷりに描くことができたのだろう。自らの体験を珠玉のラブストーリーへと昇華させつつ問題提起をした樋口氏に、改めて本作を執筆した動機を聞いてみた。
「媒体によっては『妻に復讐するため』とか適当なことを書きましたが、本当のところは違います。
毎日赤ん坊を保育園まで送り迎えして、可愛いママ友ができると、『20代の頃は経産婦を恋愛の対象と見たことなんてなかったなあ』なんて失礼なことを考えました。
『可愛いママ友、全然イケる! いや、しかしパパ友と浮気したらどうなるんだろう?』が発想のスタートだったような気がします」
愛するということに、男も女もパパもママも関係ない。