サバゲー、護身用……知られざるマニアご用達店を紹介 「オタクの街」の多彩な景色に迫る

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「オタクの街」の多彩な景色に迫る1冊! 知られざるマニアご用達店舗をコンプリートしよう

[レビュアー] 澤田真一(ノンフィクション作家)

 秋葉原は「オタクの街」であるが、それにしても「オタク」にはさまざまなジャンルがある。

「オタク=アニメ」というのは、既に昔からあるステレオタイプだ。「サラリーマン」と呼ばれる人の中にも商社勤務だったり、ゼネコン企業勤務だったりする人がいるように、オタクも人それぞれ。十把一絡げにしてはいけない。

 この記事では『特濃! あなたの知らない秋葉原オタクスポットガイド』(高橋敏也著・インプレス刊)という書籍から、1日中いても飽きない超マニアックなアキバの店舗をご紹介したい。

サバゲー愛好家御用達の店

海外製トイガン
GUN&MILITARY ECHIGOYA ディスプレイされた海外製トイガン

 サバイバルゲームという競技は、ゴルフに極めて似ている。

 どちらも正直な自己申告で成り立っている上、その土地の自然環境が必要不可欠だからだ。かつてゴルフは「森林伐採を促す環境破壊スポーツ」と言われてきたが、それは誤解である。ゴルフは良好な状態の森林がなければできないのだ。それと同時に、サバゲーも人間と自然が共生することを前提にした競技である。

 今やサバゲーもルール整備され、安全なスポーツになった。特に銃はエネルギー規制が課せられ、正しく防具を着けていれば安全性が確保されている。

 東京メトロ銀座線末広町駅に程近い『GUN&MILITARY ECHIGOYA』は、サバゲーアイテム専門店だ。

〈初めてのECHIGOYAさんなら、多くの人は入り口から圧倒されるに違いない。左上を見ればズラリと並ぶ長物のトイガン、右のショーケースを見れば整然と並べられた数百丁(おおげさかな?)のハンドガン。ミリタリー好き、トイガン好きなら圧倒された後は大興奮間違いなしの店内だ。(10〜12ページより引用)〉

GUN&MILITARY ECHIGOYAの店内
広い店内なのだが、それを感じさせない商品の豊富さ

 サバゲー用のエアソフトガンは、様々な種類が存在する。拳銃、狙撃銃、散弾銃、自動小銃。サイズも様々で、初心者はまずECHIGOYAのスタッフに声をかけてみることをお勧めする。自分に合った1丁を持ってきてくれるはずだ。

 銃本体だけでなく、それに取り付けるためのサイトやサイレンサーといった部品も充実している。服や野戦用ブーツも揃っている。ECHIGOYAはサバゲー愛好家にとってはお馴染みの店と言ってもいいだろう。

〈先ほど「何でも揃う」と書いたが、誇張表現ではない。トイガン本体は長物からハンドガンまで豊富に揃っているし、上から下までサバゲーやミリタリー系装備も揃う。そしてトイガン用のカスタムパーツは、内部的なものから外装を飾るものまで、そうとうにマニアックな品揃えである。(18ページより引用)〉

護身用品専門店が存在する!

護身用品専門店
4階にある護身商店、明るくていい感じのショップ

 日本では「護身用品」がクローズアップされることは殆どない。

 しかし海外では「警察はすぐに来てくれない」というのが常識だ。警察は発生した事件の捜査はしてくれるが、事件が起こった瞬間での護衛はしてくれない。

 JR御茶ノ水駅と秋葉原駅のほぼ中間に位置する『護身商店』は、その名の通り護身用品専門店である。

〈お客さんの来店はやはり週末に多いのだが、秋葉原に勤めている人も多いわけで、仕事終わりの夕方以降に来店というケースもある。(中略)そして特徴的なのはお客さんの男女比、やはり女性が多いそうだ。(68〜69ページより引用)〉

スタンガン
売れ筋ナンバーワンのスタンガン、180万ボルトのTITAN-1800K

 経済先進国で最も治安がいいと言われている日本でも、ストーカー被害や通り魔事件は発生している。誰よりも腕っぷしの強いレスラーか柔道家なら素手で対処できるかもしれないが、そうでない普通の女性はどうするか? 残念ながら、我々の住む世界は完全に平和というわけではない。

〈秋葉原という場所柄、地下アイドル関係の人やメイド喫茶の人などが来店したこともあると言う。(75ページより引用)〉

 護身商店では、盗聴発見器のレンタルサービスも行っている。ストーカーは、対象を尾行したり乱暴狼藉を働くだけではない。相手の自宅に盗聴器を仕込んでいる可能性もある。

「安全は無料ではない」という言葉が、改めて身に沁みるようだ。

 以上に挙げたショップは、その内容を字面で書けばなかなか近寄りがたいものかもしれない。だが、こうした店はもれなく「初心者大歓迎」でもある。先述のように、サバゲーアイテムのECHIGOYAは初心者に対して親切にレクチャーしてくれるし、護身商店は若い女子も通うショップだ。扱っているものがマニアックだからといって、肩に力を入れる必要はない。

 また、本書を読めば秋葉原の「明るく楽しいオタク」という側面が見えてくる。オタクとは、言い換えれば「趣味人」だ。分野を問わず、趣味人は誰に対しても陽気なものである。

とある男の「立志伝」の舞台

 最後に、著者の高橋敏也氏が本書の冒頭に書いた文章を引用させていただく。

〈今はなき青函連絡船に乗って、私が北海道から上京したのは今から三十数年前のこと。東京に到着してまっ先に向かったのがアキハバラであり、上野でした。秋葉原ではパソコンを探し、上野ではバイクを探しました。もっとも、貧乏な若者だった私が買えるほどパソコンもバイクも安くはなく、数年はただ秋葉原と上野へ行って指をくわえて見ている状況が続きましたが。(3ページより引用)〉

 高橋氏は自作PCの分野では超有名人であるが、かつては名もない上京青年だった。その青年が立志伝を紡いできた場所が、まさに秋葉原だったのだ。

 流れる時代と共に、北海道出身の青年は「アキバの生き字引」となった。この街も、時と共に変容しているのだ。

 そしてその変容は、秋葉原の景色をより多彩なものにしている。

インプレス
2019年5月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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