『頭のいい人のセンスが身につく 世界の教養大全』
- 著者
- ジョン・ロイド [著]/ジョン・ミッチンソン [著]/大浦千鶴子 [訳]
- 出版社
- マガジンハウス
- ジャンル
- 社会科学/社会科学総記
- ISBN
- 9784838731329
- 発売日
- 2020/12/15
- 価格
- 1,870円(税込)
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人生に好奇心を! 「世界の教養」で知識と知性をアップデートしよう
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
このページを開いた皆さんは、本書でご紹介するあれこれについて、「ああ、またくだらない『雑学オタク』や『うんちく野郎』のたわごとか」と考えてうんざりしておられるかもしれない。
しかし、その下に隠されているものを見てほしい。これはわれわれ人類が備えている素晴らしい資質に対する祝福なのである。その資質とは「好奇心」だ。 好奇心こそが、人生という道を照らすのである。
(「はじめに これは『人生を照らす力』を身につける方法」より)
『頭のいい人のセンスが身につく 世界の教養大全』(ジョン・ロイド、ジョン・ミッチンソン 著、大浦千鶴子 訳、マガジンハウス)の著者は、冒頭でこのように主張しています。
人生から好奇心が欠けると、「希望」や「喜び」、「可能性」「美」などの物事はたちまち消え去ってしまうのだとも。そして、新しい発見も、知識への飢えも渇きもなく、理解もないということは、人間の精神の砂漠化を意味するのだとも。
すなわち、人間にとっては「なぜ?」「誰が?」「いつ?」「なにを?」「どこで?」「どうやって?」と問う知恵の力こそが重要だということです。
たしかにそれは、生きていくプロセスにおいてのさまざまな瞬間において、私たちを力づけてくれるはずです。
ただ漫然と過ごすのではなく、目の前にある物事を疑ってみたり、見過ごしてしまいそうなことにも疑問を持ってみることが重要だという考え方なのです。
そこで本書では、「生物」「科学・技術」「生活」「文化」「自然・地理」とカテゴリーを5つに分けてあらゆる常識を再確認し、知識と知性をアップデートしようと試みているわけです。
きょうは日常生活に役立てられそうな興味深くユニークなトピックスが紹介されているPART3「生活」のなかから、「スーッと眠れる方法とは?」を抜き出してみたいと思います。
眠れないとき、ヒツジを数えてはいけない
睡眠は、多くの人にとっての大問題。なかなか眠れなくて悩んでいるという方も、きっと多いことでしょう。
だからこそ「眠れる方法」があるなら知りたいところですが、なにはともあれ、ヒツジを数えることだけはNGだと著者。でも、別に冗談をいっているわけではないようです。
2002年にオックスフォード大学の実験心理学部が、不眠症の患者50名の協力を得て、さまざまな入眠法の効果を調査したというのです。
その結果、伝統的な「ヒツジを数える方法」では、寝つくまでに平均より長く時間がかかることが判明したのだとか。
逆にもっとも効果的だったのは、浜辺や滝のように平穏な景色を思い浮かべることなのだといいます。
なぜならそうすれば、なによりもリラックスでき、それぞれが思い描いた風景に深く入り込めるから。これは、理屈以前に無理なく理解できる話でもあります。
入眠の妨げになるほど気がかりなことは、人によってそれぞれ異なるでしょう。しかしいずれにしても、それらを払い除けるには、ヒツジを数えることはあまりにも退屈。人によっては、逆にイライラしてしまうことも考えられるわけです。
そればかりかこの調査では、「思考抑制」という方法(脳裏に不安や悩みが浮かんだら、すぐに封じ込めようと意識すること)も効果がないということが明らかになったのだといいます。
これは、心理学者たちが「ホッキョクグマ効果」と呼ぶ現象が起きるからだという。
つまり、「ホッキョクグマのことを考えるな」と言われると、なぜかホッキョクグマのこと以外考えられなくなるという現象だ。(146ページより)
なお古代ローマ人が推奨した不眠症対策は、ドーマウス(訳注:齧歯目ヤマネ科の動物)の油で足をマッサージしたり、犬の耳アカを葉に塗りつけたりすることだったそう。(146ページより)
安眠のために知っておきたい雑学あれこれ
また、アメリカの政治家ベンジャミン・フランクリンは、
「暑くて寝苦しい夜には、片腕と片脚で上掛けシーツを持ち上げてパタパタと20回はためかせるといい。もっといいのは、ベッドを2台備えることだ。片方のベッドはいつもひんやりしているから」
と提案したのだといいます。
そしてもっと最近では、臨床研究によって「漸進的筋弛緩法」が安眠にも役立つと考えられているのだそうです。
この方法は、特定の筋肉をできるだけ長く緊張させ続け、痛みを感じたら弛緩させ、そのあとまた緊張させるという繰り返しを意識的に続けるというもの。
そうすることによって、最終的に全身をリラックスした状態に導こうというもののようです。
つまりは「体がほぐれると、心もほぐれる」という、きわめてシンプルな発想。
「TATT(『つねに疲労を感じる』という意味のtired all the timeの略)症候群」は、医師の診療を受ける理由として近年もっとも多いものである。
イギリスでは、5人に1人がなんらかの睡眠障害を訴え、そのうちの3分の1が不眠症を患っているという。
そして、睡眠不足が原因と考えられる交通事故は全体の4分の1に達するうえに、睡眠不足が長期に改善されない結果、肥満、糖尿病、うつ病、心臓病などを発症するケースもあるといわれている。(147ページより)
他にもいくつか、睡眠を専門に研究している学者たちが勧めている方法があるといいます。
たとえばそのひとつが、長時間勤務の途中で「パワーナップ」と呼ばれる数分間の仮眠をとるというもの。聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
これは実際に健康にいいようで、著者も「睡眠不足に悩む人にはぜひ試してほしい」と記しています。(147ページより)
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このトピックは比較的実用的ではありますが、なかには「体全体を黄金でペイントするとどうなる?」「『史上最強の男』は誰だ?」など、どうでもいいように思える話までが登場。
実に多種多様な話題が盛り込まれているわけで、なかには「本当に」と思わずにはいられないようなこともあります。
が、そこにおもしろさがあるのも事実。つまりは、純粋に楽しめる内容だということです。そのため、気軽に手にとってみることをお勧めします。
Source: マガジンハウス
Photo: 印南敦史