『ヤバい統計 政府、政治家、世論はなぜ数字に騙されるのか』
- 著者
- ジョージナ・スタージ [著]/尼丁千津子 [訳]
- 出版社
- 集英社
- ISBN
- 9784087370034
- 発売日
- 2024/01/26
- 価格
- 2,640円(税込)
<書評>『ヤバい統計 政府、政治家、世論はなぜ数字に騙(だま)されるのか』ジョージナ・スタージ 著
[レビュアー] 古田隆彦(現代社会研究所長)
◆データ絶対志向の落とし穴
政治はもとより経済や経営まで、統計が思考判断の基準になっている。だが、統計自身は“ヤバい”ものらしい。
英国政府が統計を基に行っている、様々(さまざま)な政策。その多くが失敗していると、同国議会・下院図書館所属の統計学者は、大胆に指摘する。統計ばかりか、それらを使った予測モデルもまた信頼できない。世界の一流の経済学者も、2008年の金融危機を予測できなかった。国連の提唱する「持続可能な開発目標」ですら、個々の達成目標は曖昧なままだ。
統計偏重主義に陥ったのは、近代西欧社会の啓蒙(けいもう)主義のせいだ。体系だった注意深い観察を行えば、物事の仕組みを支配できるという、科学的発想による。
だが、科学に基づく主張だからといって、信用はできない。その一部は好き勝手に選び出された、都合のいいデータかもしれない。それならば、「ある種の直感を大切にし、同時に物事の文脈をもっとしっかり見る」方が大切だ、と述べる。
蔓延(まんえん)するデータ絶対志向の陥穽(かんせい)を、内側から暴き出す、画期的な一冊だ。
尼丁(あまちょう)千津子訳(集英社・2640円)
英国の統計学者。専門は公共政策の計量的分析。
◆もう一冊
『統計学を哲学する』大塚淳著(名古屋大学出版会)