今までになかった「色の辞典」。105の伝統色を日本の四季に重ね合わせたビジュアルガイド『四季彩図鑑』の創作秘話を聞きました

インタビュー

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四季彩図鑑

『四季彩図鑑』

著者
北山建穂 [著]
出版社
みらいパブリッシング
ジャンル
芸術・生活/写真・工芸
ISBN
9784434289422
発売日
2021/05/18
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

今までになかった「色の辞典」。105の伝統色を日本の四季に重ね合わせたビジュアルガイド『四季彩図鑑』の創作秘話を聞きました

[文] みらいパブリッシング


色の辞典『四季彩図鑑』

同じ被写体でも時間や季節によって変化がある。

1分1秒たりとも同じものはない。

そう話すのは、日本の四季と伝統色を組み合わせた「色の辞典」とも言えるビジュアルガイド『四季彩図鑑』の作者、北山建穂さん。

見た人を魅了する彼の写真は、まるでその場にいるように感じるほど壮大で、思わず感嘆の声が漏れてしまいます。

写真家の想像力によって、風景の色が日本の伝統色と結びつく。

ページをめくるたびに、古くから色を愛でてきた日本人の心意気や、自然の色彩の豊かさを感じる。

そこに添えられた詩や俳句が、さらにイマジネーションをかきたてる。

そんな本がどのように生まれたのか、北山さんに色々聞いてみました。

夕暮れ時に見える、藍色のバリエーションをうまく伝えたくて

――北山さんの写真は、まるでその場にいるように感じるほど壮大で美しく圧倒されます。もともと写真を撮るのが好きだったのですか?

もともとは写真に興味がなかったのですが、観光関係の仕事に異動になり、ポスターやパンフレットを制作することになったんです。そこで、自分で機材を購入して観光名所の写真を撮っていたら、どんどんハマっていって。独学で勉強し、写真を撮りためていくうちに、何か形にしたいと思うようになったんです。

――日本の四季と伝統色を組み合わせるという『四季彩図鑑』のアイデアはどこから生まれたんですか?

もともと色が好きで、特に青色系統が好きなんです。

その中でも、夕暮れ時に見られる藍色ってバリエーションが多くて。この綺麗な色をうまく伝えられないかと思って、伝統色と組み合わせてみたのがきっかけです。

写真を先に撮影して、そのあと色図鑑を見て色の名前をつけていたんですけど、本をつくるにあたって、先に色を決めて写真を撮ることも出てきましたね。

――本を読み終えて、日本にはこんなにたくさんの美しい色があって、そのすべてに名前がついているのだなと感動してしまいました。まだその余韻が残っています。

そう言っていただけると、ありがたいです。

日本って世界に比べても、名前のある色の数が多いはずなんですよね。自然の事象ひとつひとつに美しい色の名前がついているくらい。

この本を通してさまざまな色と出会い、日本の四季や自然の豊かさを、多くの人に感じてもらいたいと思います。


自然の色と日本の伝統的な色の名前を、重ね合わせながら堪能できる

同じ場所でも、日没の時間や雲の形で、毎回違う写真になる

――出版のきっかけとなった写真出版賞への応募時点で、すでにこの本の原型はできていたのですか?

はい、写真の下に付した色の説明書きはありませんでしたが、ほとんどそのままです。

ただ、初めは写真の流れを春夏秋冬にしていたものを、編集者さんと相談しながら、初夏から始まり晩春で終わるように変更しました。

表紙の候補として「青」の雨傘が水たまりに映った写真もあったのですが、見る人が手に取りやすく且つ、暑くなってくるこの季節にも合った色をということで「思色」に決定しました。

――北山さんは普段、日光市内で働かれているんですよね。

今は、日光の観光に携わる仕事をしています。少し前までは文化財に関する仕事だったので、異動によってすることはいろいろ変わります。

撮影するのは仕事終わりが多いので、自然と夜景や星の撮影が増えるのですけど、鹿の鳴き声だけが聞こえるような人のいない場所に撮りに行ったりするので、家族や友達に「怖くないの?」と聞かれることもあるんですよ。でも、怖さよりも撮りたいという気持ちが勝つんですよね。

同じ場所でも日没の時間や雲の形などその時々で変わるので、毎回違う写真になるから面白いんですよ。

――撮影においてこだわっているポイントや演出されていることは何かありますか?

いつも、ここにこういったものが来たら絵が完成するな、と物語を想像しながら撮っています。たまに置いてあるものの配置を変えることはあるんですけど、基本的にはその場にあるものをそのまま利用することが多いです。

ここに人がいてくれたらいいなと思っていたら、偶然そこに人が立ってくれた、ということもありました。待っていればいいこともあるんだなと思いました。

何の変哲もない場所にも、美しい景色が広がっている

――どんな人に読んでもらいたいですか?

日光で撮った写真が多いので、今は旅行に行けないけれどせめて気分だけでも味わいたいという方に、景色や色に思いを馳せながら読んでもらえたらいいなと思います。

それから、日光に住んでいる地元の人にも読んでもらいたいですね。日光は観光名所としては有名ですが、住む人の中にはつまらない場所だと思っている人もいると思うんです。だからこそ、自然豊かで、歴史や伝統文化がある日光はとても素晴らしい場所だということを再認識してほしいんですよね。

私の撮る写真には何の変哲もない場所で撮影したものが多いんです。“星になりたかった桜”が映っている「薄花桜」や、夕焼けで水田が赤く染まっている「朱砂」などは、まさにそうで。

気づかないところにだって、美しい景色は広がっているんだということを知ってもらいたいですね。

――どれも素敵で美しい写真だと思うのですが、北山さんが特に思い入れのある写真はありますか?

「伯林青」「朱砂」「夏虫色」ですかね。

「伯林青」に写っている田んぼは、静けさで覆われた場所にあって、本当は写真に写っているより前の時間に撮影しようと思っていたんです。ただ、トラブルがあって時間が遅くなってしまって。でも、この美しい景色はこの時間だったからこそ撮れたもので。

「同じ被写体であっても1分1秒たりとも同じ写真は撮れない」そう思うんですよね。


時間が遅れたからこそ捉えられた、この色

研ぎ澄まされた詩語とのコラボレーションにより、膨らむイマジネーション

――そんな一瞬の色を捉えたドラマチックな写真に、詩が添えられたページもありますね。それらがより深みや味わいを広げているなと感じました。

詩人の永方佑樹さんが書き下ろしてくれたものです。

言葉の力を得ることにより、写真の持つ訴求力は格段に上がります。

永方さんに寄せていただいた詩は、どれも私の思い描いていた写真の世界観そのもので、研ぎ澄まされた詩語は心に深く響きました。素敵な化学反応が発生したと思います。

――印象的だった詩はどれですか?

どれも素敵な詩ばかりで本当に迷います。

そのなかでどれか選ぶとすれば、「朽葉色」ですかね。まさに、静かに朽ちていく時間の独特な切り取り方に感動しました。

自分の撮影した写真で伝えたい事物や想い、そして情景を的確に表現してくれたと思います。まるで一緒にその場に居たかのようです。


詩人の永方佑樹さんの言葉と北山さんの写真が響き合う、儚くも永遠のような1シーン

――今後どういった活動をしていきたいですか?

まだまだ日本の伝統色はたくさんあるので、これからも風景のなかに色を見つけて撮り続けていきたいと思っています。展示も、いつか機会があればやってみたいですね。

――いつも持ち歩きたくなるような素敵な本なので、多くの人に手にとってもらえるといいですね。本日は、ありがとうございました!

〈おまけの質問〉

Q.ここだけの話を教えてください

「建穂」という名前は本名なのですが、同じ名前の人にはまだ会ったことがありません。「人の上に立ち、稲穂のように実り深く」という意味があるらしいです。でも実っている稲は首を垂れるから、立たないのになぁと思ってるんですけどね(笑)。小さい頃はホタテといじられたりして嫌いだったんですが、今は名前を覚えてもらえるきっかけになるので、気に入っています。

話を聞いた人:北山建穂(きたやま たてほ)さん

写真家
1974年、栃木県日光市生まれ、在住、在勤。2008年にデジタル一眼レフカメラを購入して以来写真が趣味となり、多数のコンテストに入賞。主な受賞歴は、「しもつけ写真大賞」準特選、「鹿沼市再発見観光写真コンテスト」特選、「奥日光清流清湖フォトコンテスト」伊藤園特別賞、「日光フォトコンテスト」日光杉並木賞、「下野新聞紙上写真コンテスト」金賞など。本作で「第3回写真出版賞」大賞を受賞。

取材・文 ゆのきうりこ/笠原名々子

みらいパブリッシング
2021年6月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

みらいパブリッシング

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