『日本の道路122万キロ大研究 増補改訂版』
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最も身近で未知のインフラ 「道路」の魅力を一冊に
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
ふだん鉄道を利用することはないという人はいても、道路をまったく利用しない人は、まずいないはずである。だがその身近な存在である道路というものを、我々はまるで知らない。毎日通る近所の道路は、誰が作って誰が管理し、どこまで通じているのか、気にしたことのある人はほとんどいないことだろう。
『日本の道路122万キロ大研究 増補改訂版』は、道路に魅せられ、道路に取り憑かれた著者・平沼義之氏の集大成というべき一冊だ。道路に関する法規、歴史、土木工学、そして各種の雑学までもがふんだんに盛り込まれており、壮観という他ない。
明治以降の道路史を眺めると、そのまま日本の近代史に重なることに気づく。道路網の変遷を辿れば、各時代の国家のグランドデザインが透けて見えてくるのだ。この方面からの学問的な追究は、もっとなされるべきだと思える。
一方で、全く趣味的、マニア的な目で道路を眺めた記述も楽しい。道路標識ひとつをとっても、レア物件あり、文化財級のレトロ物件あり、地方独自の工夫がなされたものあり、交通事情の変化に合わせて登場する新種標識ありと、恐ろしく奥が深いのだ。
道路は長く用いられ、多くの人々が関わるものであるだけに、その内情は知れば知るほど複雑怪奇だ。この本を手に取れば、空気のようにまるで気にすることのなかった道路たちが、全く違った存在に感じられることだろう。