「羞恥心の問題」ではありません!
[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)
アスリートが股間、胸の谷間、お尻などをとくに狙って撮影されることがある。長らくそれはがまんするしかないことだったが、最近はアスリート自身が反対の声を上げられる環境ができてきた。共同通信運動部編『アスリート盗撮』で最新の動向を知る。
もともとスポーツ選手は、自分の画像に卑猥なコメントをつけて拡散されるような被害を受けやすいが、個人で対処するしかなく、泣き寝入りとなるケースも多かった。日本はとくに対策が遅れていると言われる。しかし二〇二〇年、日本のスポーツ界は大きく動き始めた。
きっかけのひとつが、共同通信運動部による調査報道。日本オリンピック委員会(JOC)はこの記事を受け、取材チームを招いて話を聞き、各競技団体への働きかけも始めた。選手への聞き取り調査も始まり、性的画像の撮影がしやすい場所には撮影者の立ち入りを禁止するなどの対応をとる競技会もある。
最も大きいのは、JOCの呼びかけで、JOCを含む七つの国内スポーツ団体が共同声明を発表したことだ。「盗撮、写真・動画の悪用、悪質なSNS投稿は卑劣な行為」「犯罪として処罰される可能性がある」と明言した。
この問題は、「羞恥心の問題」とは言えないのではないだろうか。一人の人間を不当に攻撃し人生に悪影響を及ぼす行いなのだ。女性だけの問題ではないことも、もっと知られるといいと思う。