『幸せになりたいけど、頑張るのはいや。』
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幸せになる方法を片っ端から試してみて気づいた、すぐできる2つの考え方
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
私たちはよーく知っている。
幸せになるには、他人と比較しないで
すでに手にしているものに感謝し
現在に集中して生きていけばいい、ということを。
頭ではすでによーくわかっている(それができないだけ!)。(「PROLOGUE」より)
『幸せになりたいけど、頑張るのはいや。 もっと上手に幸せになるための58のヒント』(ダンシングスネイル 著、SBクリエイティブ)の冒頭にはこうあります。「現に、幸せというものはそんなに簡単には訪れなかった」とも。
だとすれば知りたいのは、「では、どうすればいいのか」ということであるはず。もちろんそれは著者も同じで、頭で理解していることを心まで引っぱってくる方法をどうしても知りたかったのだといいます。
そこで、幸せに関する本、心に関する本を読み、著者たちがすすめる方法のうち自分にもできそうなものを実践し、体験してみたのだとか。地道な作業であるようにも思えますが、そんなふうに、長年の悩みにひとつずつ向き合うことによって、解けなかったパズルを解いていったということです。
そして、その過程で私が感じたり気づいたことを
ここで共有したいと思う。(「PROLOGUE」より)
そんな本書のCHAPTER 3「明日はもっと輝くはず」のなかから、2つのトピックスを抜き出してみましょう。
心にポジティブをひとさじ加える
「朝、目を覚ました途端からスマートフォンを見ない」
「ごはんを食べてすぐに横にならない」
「あと5分だけ寝るっていわない」
などなど、頭ではわかっているのに、行動が伴わないことはあるものです。どんな選択がより自分のためになるのかわかっているにもかかわらず、頭と体がバラバラになってしまう。だから、もどかしさを感じてしまうのでしょう。
しかも「目標どおりに行動できなかった」という過去の記憶は、ネガティブな感情を残していくことになるかもしれません。時間が経つにつれて無意識まで根をおろしてしまい、また新たな挑戦をしようとすると、心のなかから「前にやってみたけど、ダメだったじゃん。今回もダメだと思うな」というような声が聞こえてきたりするわけです。
しかしそんな声が内側でリピートされると、当然のことながら、なにかを試してみようという原動力は失われてしまうことになります。脳がなにかを指示している途中に心が拒否反応を示すと、行動につながりにくくなるからです。
そんなとき、私たちには
肯定的なストーリーが必要だ。
置かれた状況を客観的に見すぎないで
ポジティブな視線をひとさじ加えると
心を動かすのがぐっと簡単になる。(244ページより)
じつは私たちは、すでに日常生活のなかでこのトリックをよく使っているのだといいます。それは、不都合な真実に向き合いたくなくて「自己正当化」するとき。自己正当化にはよくない面もありますが、いい方向にうまく活用すれば、やってみたいことを行動に移す際に役立つそうです。
「前にやったときは調子がよくなかっただけ。もう一度やってみたら、うまくいくかもよ」
挑戦するのが怖いときは、こんなふうにプラスに自己正当化してみるべきだということです。そうすれば、これまで足を引っぱってきたネガティブな感情と離れる勇気が出るものだから。(243ページより)
夢と職業を分けて生きる
夢に対する大きな勘違いのひとつは、夢を叶えれば永遠の幸せが保障されるという現象だーー。著者はそう指摘しています。
たとえば、「長い就職活動の末に夢を叶えたけれど、いつの間にか、出勤と同時に退社を夢見るようになっていた」というような声を耳にする機会は少なくありません。
以前は強く願っていたはずの夢を叶えることができたのに、なぜ、「その後、末長く幸せに暮らしました」という話は聞こえてこないのでしょうか?
どんなに願っていたすごいことをなし遂げたとしても
その幸福感が一生続かない最大の理由は
それに適応してしまうことにある。(266ページより)
望んでいた職業を手に入れたときの達成感や快感は、一定の時間が経つとそれを得る前の初期値に戻るようになっているというのです。
そうであるなら、切実に望んでいた夢が毎日の仕事になった結果、退屈でしんどいものになったとしても無理はないかもしれません。
望んでいた職業についても一生幸せではいられない
もうひとつの理由は
私たちが「夢」と「職業」を混同していることだ。
私たちが考える「夢」というものは
範囲がきわめて限定的だ。
たとえば、宇宙飛行士になるのが夢だと言う子はいても
世界平和に寄与するのが夢だと言う子は多くない。
もし、この子が大きくなって宇宙飛行士になれなかったら
宇宙飛行士以外のたくさんの職業のうち
どんな仕事をすることになっても
この子は一生夢を叶えられなかった人になる。
けれども、世界平和に寄与する方法は無限にある。
「世界」や「平和」と
全く関係のない職業についたとしても
関連団体に寄付をするだけで
夢を叶えることができるのだから。(267ページより)
つまり、私たちは「夢を叶えれば幸せになれる」ということばを当然のように信じて生きているというのです。しかし、そもそもそれが違うのでしょう。だからこそ今後は、こうした絶対的な古い命題を、少し違った視点から考えてみてはどうかと著者は提案しています。
そうすれば、単に職業と職場内で幸せを求めてさまよわなくても、いつだって夢を叶えながら生きていけるのだから。少なくとも、仕事が人生のすべてだと思う必要はないのです。(266ページより)
この本は、どうすればあなたと私が
一緒に幸せになれるかについて書いたもの。(「PROLOGUE」より)
著者はこうもいいます。理由は簡単で、自分の幸せだけを追求したのでは、意味のある人生に到達できないから。かといって、他人のために犠牲になってばかりの人も、自分のための時間を失ってしまうものだから。その中間地点くらいのところでうまく生きていくために、本書が小さな助けになればいいというのです。
一生懸命生きているつもりなのに、なぜだか不安が消えないーー。そんな思いを抱えている方は、本書のなかからなにかを見つけられるかもしれません。
Source: SBクリエイティブ