広告のプロが「小さなお店・会社」の宣伝のコツ教えます。いい悪い知られ方の違いは?

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広告のプロが「小さなお店・会社」の宣伝のコツ教えます。いい悪い知られ方の違いは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

なぜウチより、あの店が知られているのか? ちいさなお店のブランド学』(嶋野裕介、尾上永晃 著、宣伝会議)のふたりの著者は広告プランナー。普段は広告やPR、SNSでのキャンペーンを設計しているのだそうです。

つまりは消費者に商品やサービスを知ってもらい、購入してもらったり好きになってもらったりする企画を考える仕事。飲食やファッション、はては地方自治体と、担当ジャンルも広範であるようです。

そんな2人が本書をつくろうと思い立ったのは、2020年の春ごろ。近隣にコロナの影響を受けて閉店する店が相次ぎ、「なにか助けになれることがあったらよかったのに」と感じたことがきっかけだったのだとか。そこで話し合った結果、「街なかの商店やネット上の個人商店にも、広告の世界で培った知見を提供できるのではないか」と思い至ったというのです。

そういった“小さなお店”にとっての重要なポイントは、「知られていなければ、どんなにいい商品でも届かない」ということ。

「よい商品をつくっていたら知られるはずだ」というストーリーを信じたいのも事実ではあるけれども、なかなかそうもいかない側面があるということです。

そこで、さまざまな上手な知られ方をしているお店にインタビューをさせていただいて、うまく知られているお店が何を考えているのか、何をやっているのか、ということを記事として発信してきました。

この本はウェブメディア「アドバタイムズ」での連載がもとになっているのですが、わたしたちも多くの学びや気づきをもらいました。と同時に、われわれが普段やっている仕事から学びを共有できる部分もあるなという思いが強くなっていきまして。(「はじめに」より)

そのため本書には、学んだことと本業で培ったものを混ぜて共有するというようなニュアンスがあるといいます。きょうは1章「正しく、いい感じに知られよう」のなかから、「知られる」ための基本を抜き出してみたいと思います。

「知られる」ことはますます重要になっている

インターネットとSNSは、モノを買う行動に2つの大きな変化をもたらしたと著者は指摘しています。まず1つ目は、オンラインで直接商品やサービスを買えるようになったこと。2つ目は、買う前に評判などをチェックできるようになったこと。

たしかに“評判”の検索は、ネットショッピングのみならず、すべての商売に影響を与えています。その証拠に、検索やタグで上位に上がってくるものはさらに人気を集めますが、下にいるブランドはクリックされる機会が増えないまま、ずっと下位にとどまり続けます。

つまり、お店やサイトにお客さんが来る前に、勝負がついていることもあるわけです。

さらにコロナ禍に入ってからは、ネットショップの数が加速度的に増加。2018年から、5年連続でネットショップ開設実績1位を謳うBASEでは、コロナによる影響が日本でも大きく出始めた2020年5月の段階では100万ショップだったのが、1年後の2021年5月には一気に50%アップして150万ショップになったといいます。リアルでの接触が避けられる中で、個人商店や中小企業が販路を拡大したり、大企業の新規事業としてネットショップをスタートさせたのがその理由です。(16〜17ページより)

すでに知名度の高い企業が開くネットショップは、既存ファンの購入機会を拡大させます。「知っている店」だから、商品名や企業名で検索したり、あるいはSNSアカウント経由で人が訪れるわけです。

一方、知られていないショップには人が集まらなくて当然。そのため、まず「知られる」ことが重要な意味を持つのです。(16ページより)

「知られ方」にもよしあしがある

とはいえ、「とにかく知られればいい」というわけではなく、知られ方にも「いい・悪い」は存在するもの。たとえば社会のルールや道徳に反することをして炎上させ、それで知られたとしても、長い目で見れば商売のためになるはずがないわけです。

なお、知られ方のよしあしは、シンプルに以下の基準で区別できるそうです。

「自分の商売の狙いに貢献できているかどうか」(18ページより)

つまり単に名前が知られるだけではなく、その商売にとって大切な部分や強みのイメージをも含めて知られる必要があるのです。いいかえれば、いい知られ方とは「商売の根っこ」への貢献につながるものであるということ。なお、いい知られ方をしているかどうかは、次の基準でチェックできるそうです。

これは「いい知られ方」

・自分の「やりたいこと/強み」が伝わっている

・無理をせずに続けられる内容になっている

・継続的にファンが増えていく

(19ページより)

ここに着目すれば、中長期的に自分たちのよさを伝えることができ、結果として商売のファンを着実に増やしていけるわけです。対して「よくない知られ方」は、「狙いとはズレたところ」で広がっていってしまうものでもあるようです。

これは「よくない知られ方」

・自分の「やりたいこと/強み」と関係ないことが伝わっている

・無理していて続かない

・ファンが増えない

・なんならアンチが増えている

(20ページより)

こういう状態のまま発信を続けていくと、話題になったり拡散されたとしても、まったく商売に返ってこないわけです。

そればかりか、商売への悪影響が生じたり、損失さえも生みかねないことにもなりかねません。したがって、いい知られ方をするためにはまず「いいブランド」になることを目指すべき

ブランドとは、他と区別する印として生まれた考え方です。自分の商売が他の商売と何が違うか、どこにこだわっているのか、といった商売の「売り」が時間をかけて世間に知られていくことで、ブランドはつくられます。(21ページより)

つまり、自分たちのよいところを明確にし、世間に知ってもらうことこそが重要なのです。(18ページより)

広告人である著者が仕事をする際に大切にしているのは、「ただ大きな声で伝えるだけでなく、『自社のサービスや商品を、お客さんが興味を持つような見せ方にして伝える』ことだといいます。そうした考え方を軸とした本書は、小さなお店を成功させるために役立ってくれることでしょう。

Source: 宣伝会議

メディアジーン lifehacker
2023年5月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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