毎日ポジティブに働くコツは「自分の強みを生かす仕事と環境に身を置くこと」といい切る理由

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もっと自分を知って好きになる! ポジティブ大全

『もっと自分を知って好きになる! ポジティブ大全』

著者
徳吉 陽河 [著]
出版社
総合法令出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784862809049
発売日
2023/05/10
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

毎日ポジティブに働くコツは「自分の強みを生かす仕事と環境に身を置くこと」といい切る理由

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

もっと自分を知って好きになる! ポジティブ大全』(徳吉陽河 著、総合法令出版)の著者は、1990年代後半に生まれた「ポジティブ心理学」や「ポジティブ心理療法」に基づいて精力的な活動を続ける人物。その目的は、「希望」を見出し、「強み」を発揮できる人を増やすことなのだそうです。

どんな時代でも、困難なことに立ち向かう必要のある局面が出てきます。そんなときのために、たとえ「ネガティブ」であっても、「あるがまま」に受け止めて、ネガティブやトラウマさえも「強み」にできる人が少しでも増えてほしいと願い、執筆したのが本書です。

本書には、「ストレングス(強み)」について、ポジティブ心理学やポジティブ心理療法を中心に、脳科学、行動遺伝学、行動経済学、キャリア心理学などの、有用な知識や技法を含んでいます。(「はじめに」より)

著者によれば、ストレングスは生活のさまざまな場面で活用できるようです。もちろん、ビジネスにも。そこできょうは、Chapter 4「ストレングスを生活に生かす」内の「ビジネスに生かす」に焦点を当ててみたいと思います。

キャリア形成に生かす

まず、「キャリア形成」について考えてみましょう。

これまで日本人にとってのキャリア形成では、「いい企業に入社すること」が最大の目的とされていました。そうすれば人生の幸福や安定が得られると、多くの人が信じていたわけです。ところが現代においては、どれだけ「いい企業」に入社できたとしても、必ずしも幸福や安定が保障されるわけではありません。

自分の幸せを社会に任せてはいけません。どれだけ社会が不安定になっても揺らがない、人生の指針となる「幸せ」を見つけ、そこへ向かうキャリアを自ら形成する必要があるのです。(225ページより)

なお、自分にとっての幸せを考えるヒントとなるのが、ポジティブ心理学の創始者であるマーティン・セリグマンが提唱した「PERMA理論」。そこでは持続的な幸福感である「ウェルビーイング」は、次の5つの要素で構成されると考えているのだといいます。

Positive Emotion(ポジティブ感情):前向きな気持ちや考え方を持てる

Engagement or Flow(関与・没頭):自分の強みを生かした活動に熱中あるいは集中できる

Relationship(関係性):良好な人間関係を築ける

Meaning(意味):自分の活動や人生に意義を感じられる

Accomplishment(達成):目標を達成できる

(226ページより)

セリグマンは、これら5つの要素はストレングスを活用することで高められていくと述べたわけです。つまりウェルビーイングを得るためには、自分のストレングスを活用できる環境を見つけ、PERMAを追求することが重要だということ。

上記の例にあてはめるなら、「いい企業に入社すること」はウェルビーイングを得るための手段のひとつにすぎません。就職するより起業するほうがウェルビーイングを得られる人もいれば、フリーランスのほうが適しているという人もいます。

どれが正しいか、間違っているかということではなく、「自分のストレングスを発揮しやすい環境」であるかどうかが大切なのです。

したがって、もし現在の環境ではストレングスを生かせないのなら、少しでもPERMAを得られるキャリアを切り拓く必要があるわけです。(225ページより)

商品・サービスづくりに生かす

「自分だからこそ提供できる商品・サービス」をつくる際にも、ストレングスを発揮することが可能。ただし日本社会には多くのモノやサービスがあるので、ひとつのストレングスだけで差別化するのはきわめて困難でもあります。

洗濯機を例に挙げれば、単に「服を洗う」という機能だけでは、あっという間に競合他社の製品のなかに埋没してしまうわけです。

しかし「服を洗う」という基本機能に新たなストレングスを組み合わせることができれば、とても魅力的な商品になるかもしれません。

たとえば「オレンジ色」というストレングスを加えてみると、「よくある白い洗濯機ではつまらない。もっと個性的なものがほしい」という人たちに支持される可能性も生まれるでしょう。

そのように、ストレングスをうまく組み合わせて顧客のニーズを満たせば、商品には希少価値が生まれることになるのです。その結果、ビジネスを発展させることができるということです。(228ページより)

ワーク・エンゲージメントを高める

ワーク・エンゲージメントとは、仕事に関するポジティブで充実した心理状態を指すもの。ワーク・エンゲージメントの研究者であるウィルマー・B・シャウフェリは、「ワーク・エンゲージメントは、活力・熱意・没頭の3つが揃ったときに生まれる」と述べたのだそうです。

・活力(Vigor):働いている間に湧いてくるエネルギー

・熱意(Dedication):仕事に意味や誇りを感じていること

・没頭(Absorption):仕事に集中し、のめり込んでいること

(231ページより)

「PERMA理論」と非常に似ていることがわかるのではないでしょうか。たとえば活力は「ポジティブ感情(P)」、熱意は「意味(M)」、没頭は「関与・没頭(E)」と重なる部分があります。

もちろん「達成(A)」や「関係性(R)」も欠かせないもので、2009年に発表された論文では、ワーク・エンゲージメントを高める要因として、良好な労働環境や人間関係も重要であることがわかっているのだそうです。

良好な関係とは、

・仕事に必要なトレーニング

・仕事の裁量権

・多種多様な報酬

(231〜232ページより)

などが用意されていることを指すもの。これらの環境が整っていると、「達成(A)」に近づきやすくなるのです。また、良好な関係とは、

・上司からのコーチング

・上司や同僚からのサポート

・仕事に対するフィードバック

(232ページより)

などが与えられる状態でもあり、まさに「関係性(R)」を満たしてくれます。つまりストレングスを発揮できる仕事と環境を用意できればPERMAが高まり、ワーク・エンゲージメントも自然と向上するわけです。(231ページより)

どこから読んでもかまわないと著者のいう本書は、強みを生かしていくための知識や方法、ノウハウを習得するには最適な一冊。より自分らしく活動できるようになるために、参考にしてみる価値は大いにありそうです。

Source: 総合法令出版

メディアジーン lifehacker
2023年5月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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