つねに成果を出し続けている「トップ5%セールス」の再現性の高い行動ルールと共通点

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つねに成果を出し続けている「トップ5%セールス」の再現性の高い行動ルールと共通点

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

AI分析でわかった トップ5%セールスの習慣』(越川慎司 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、自身が創業した働き方改革の支援会社を通じ、6年で800社以上のクライアント企業と接点を持ってきたのだそうです。

その結果として行き着いたのは、「各社のトップセールスに共通する行動習慣を分析すれば、“営業の勝ち筋”が見つかるのではないか」という思い。

そこで「がんばっても成果が出ない人」を救うべく、「成果を出し続けている人」について膨大なコストをかけて「トップ5%セールス調査」を行うことに。800社以上のクライアントに声をかけて協力してもらえる企業を探し、3年半にわたる調査と行動実験を繰り返してきたのだといいまです。

そこから導き出されたトップ5%セールス(以下、5%セールス)の特徴を、一般的な「その他95%セールス(以下、95%セールス)」が9か月間真似をしてみるという「再現実験」をのべ2.1万人に実施した結果、再現実験を行なった95%セールスの成績が平均1.2倍上がったのだとか。

そこで本書では、調査データと行動実験をもとにした「再現性の高い行動ルール」を明らかにしているわけです。

なお5%セールスとは営業成績の上位5%という意味ではなく、「成果が安定している人たち」を指しているのだそう。3年前も2年前も1年前も連続して目標を達成し続け、かつ社内の営業成績がトップ5%に入っている人だということです。

5%セールスは成果を出す習慣を身につけていますので、他部門へ異動しても、他社へ転職しても良い成績を出し続けます。

つまり、再現性の高い行動習慣を持っている人たちです。(「はじめに」より)

こうした考え方に基づく本書のなかから、第2章「5%セールスの意外な共通点」に注目してみたいと思います。

5%セールスの61%は「プレゼンが苦手」

トップの営業成績を残す人には「プレゼンテーション上手」というイメージがありますが、実際には人前で話すと緊張する人が多いよう。事実、プレゼンテーションは苦手だと答える5%セールスは全体の61%もいたのだといいます。

一方、プレゼンが苦手だと答えた95%セールスはわずか27%。この調査結果からすれば、「プレゼンが得意=営業成績がよい」という因果関係はなさそうです。

そして顧客へのヒアリングでわかったのは、5%セールスは話し上手というより聞き上手だということ。同じ社内で同僚にランダム・ヒアリング(対象者および回答者を無差別にピックアップして調査)すると、78%の回答が「あの人は聞き上手」というものだったというのです。

たしかに話を聞いてくれるセールスは、顧客にとって好印象。いいかえれば、聞き方ひとつで相手の好印象を持たせることができるわけです。

しかし、そもそも聞き上手とはどういうことなのでしょうか?

そこには、テクニックや相手との関係性といったものもあるでしょう。

しかし、顧客や同僚から「聞き上手」と評価されるのは、それだけではありません。

相手に好印象を与えるポイントは、「聞いている姿を相手に見せること」にあるのです。

情報のほとんどは目から入ってくるといわれています。5%セールスはその視覚を使って、「(相手の話を)しっかり聞いていますよ」と、相手に見せているのです。

5%セールスは、深くうなずき、あいづちを打ち、相手が話しているのをさえぎって話すことは決してしないようにしているそうです。(47ページより)

ポイントは、深くではなく、ゆっくりうなずくこと。うなずきがゆっくりだと共感を示していることが伝わり、相手が安心するというのがその理由です。とくに、まだ関係性が浅い相手との対話においては、ゆっくりうなずくのが効果的であるようです。

また、メモをとっている姿を見せることも重要だそう。パソコンやスマホでメモをとると、文字入力の動作が相手に冷たく見えてしまうもの。キーボードを打つ音がうるさい印象を与えることもあるでしょう。そこで5%セールスは、目の前でノートを広げてメモをとる様子を見せるというのです。

さらには、「いますごく大切なことをおっしゃったので、メモをとらせてもらってよろしいですか?」というようなひとことを発することにも効果があるそうです。(46ページより)

5%セールスの62%は「ストレスの発散法」を持っている

ストレスは誰しもが感じているもので、0にすることは困難。しかし5%セールスは、ストレスがあっても対処する手段を複数持っておくことによって、精神的なダメージを抑えているのだといいます。そうしたストレスへの接し方が、行動を止めることなく継続する力に影響を与えているのでしょう。

レジリエンスという言葉を聞いたことはありますか?

レジリエンスとは、心理学において、ストレスや困難な状況に適応する能力や強さを意味するだけでなく、そうした状況から回復する能力をも指します。

5%セールスへのヒアリングによると、ストレス発散方法を持っていると答えた方が62%いました。同じ質問を95%セールスに投げると21%でしたので、ストレスとの付き合い方を知っている人が多いのが5%セールスといえるでしょう。(55〜56ページより)

著者はストレス発散方法を知りたかったため、ヒアリングに同行したことがあるのだそうです。その結果わかったのは、5%セールスはストレスに強いのではなく、ストレスを忘れる手段を複数持っているということ。

5%セールスは、釣りやキャンプ、マラソン、ゴルフ、オートバイや車など、複数の趣味を持っている方が多かったです。「趣味のために働いている」と答えた人の比率は、95%セールスの5.3倍でした。(「はじめに」より)

つまりは自分が好きなものに集中することで、ストレスや緊張感から解放されるということのようです。(55ページより)

本書を通じて「成果を出し続けている5%セールス」の行動習慣に触れ、「自分に当てはまるもの」「当てはまらないもの」を探してみてほしいと著者はいいます。

「当てはまらないもの」があったらひとつだけピックアップし、トップ5%の習慣を実践してみようとも。そして、効果があれば続けてみる。そうした繰り返しが、自分にとっての最適な「勝ち筋」につながっていくということです。

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

メディアジーン lifehacker
2023年5月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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