百害あって一利なし。考えることが苦手なら頭で先に「まとめない」こと

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「考えるスキル」を武器にする

『「考えるスキル」を武器にする』

著者
筧 将英 [著]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784866802275
発売日
2023/05/10
価格
2,090円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

百害あって一利なし。考えることが苦手なら頭で先に「まとめない」こと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「考えるスキル」を武器にする』(筧将英 著、フォレスト出版)の著者は、電通で「ストラテジックプランナー」を務めたのちに独立し、コミュニケーション戦略/ブランド戦略を得意とするストラテジーブティック「Base Strategy株式会社」を設立したという人物。現在は、企業の戦略策定の支援などを行っているのだそうです。

この本では、これまで多くの大手クライアントやスタートアップ企業のコミュニケーション戦略/ブランド戦略などの提案や、さまざまなプロジェクトの推進を手がけた私自身の経験に基づいて、「広告/PR/マーケティングにかかわる人たちが日々の仕事で頭をどのように動かしているのか?」を解説します。(「はじめに」より)

とはいえ、広告やマーケティングの世界でキャリアを積んできた方々に向けたものではないようです。メインのターゲットはまだ経験の浅いプランナー、あるいは広告業界には属していないものの、「考えることが得意になりたい」という意識を持っている若手ビジネスパーソンなのだそう。

具体的には、総合広告代理店やデジタル系広告代理店の新卒から入社2〜3年目くらいの人(とくにマーケティング、クリエイティブの部門に配属された人)たち。また、広告業界ではないけれど、企画やアイデアを考えなければならない職種に就いている人たちなど。他にも就職活動をしている大学生など、対象となる層はとても広そうです。

こうした方たちに、これまで広告代理店に入ってOJTを経験しなければ身に付けられなかった、広告プランニングやマーケティング業務における「考えること」の基本をお伝えできればと思います。(「はじめに」より)

きょうは、そんな本書の「初級編 頭の外に出す」内の第1章「『考えること』は『まとめないこと』」のなかから、<まとめないコツ>に注目してみたいと思います。

意外なことに、「考えること」において、「まとめること」は“百害あって一利なし”なのだとか。

なお、ここで前提となっているのは「思う」と「考える」の違い。「思う」は、思考が同じところを何度も行き来していて、頭のなかの交通整理がされていない状態。対する「考える」は、思考の流れが整理され、道筋がきれいに通っている状態だというのです。

まとめないコツ1:「思ったこと」と「整理すること」を分ける

人は会話をする際に、思ったことを頭のなかで整理し、適切なことを取捨選択しつつアウトプットしているもの。しかし多くの人は、考えるときにも同じことをしてしまっているのだそうです。

たとえば「書くこと」に置き換えるなら、頭で思ったことをいったん整理してから、紙に書き出すという手順がそれにあたるもの。話す際にも同じプロセスを踏んでいるわけで、それがアウトプットを難しくしている理由だというのです。

自分で思っている以上に、人は言葉を選んでいます。

ここであなたにやってみていただきたいことは、頭に浮かんだことを選ばずに“すべて”紙に書き出すことです。(中略)コツとしては連想ゲームをするように頭を働かせていき、浮かんだ言葉を手を止めないでそのまま書き出していくようにします。(31ページより)

この作業で避けるべきは、正解を目指すこと。

「間違っているかもしれないけれど、気にせず、まずは頭の外に出す」ことが重要で、それを繰り返していけば、書き出せる情報量は増えていくそうです。そして、このアウトプットの結果を見てみれば、多くの情報が含まれていることがわかるはず。そこから情報を整理したり、考察していけばよいわけです。(30ページより)

まとめないコツ2:ことばづかいを意識する

ことばの使い方はその人の個性であり、情報であり、そこには重要なインサイト(潜在的な欲求)がこもっているのだと著者は主張しています。

たいていの人は他人と話すとき、浮かんだことばをそのまま口にはしないもの。耳ざわりのいいことばに置き換えたり、わかりやすい表現や、仕事で使う専門用語などに変換してから発言しているわけです。しかし、考えるときにそれをやってしまうと、頭に浮かんだことばに含まれる“肝心な情報”が抜け落ちてしまうことも。

たとえば「自動車」について記述する際、「燃費がいい」と「たくさん走れる」では情報としての意味がまったく異なります。「ちょうどいい大きさ」と「小回りがきく」、「5人乗り」と「両親と子どもで」などについても同じ。

自分の頭のなかに浮かんだことばを外に出す際にも、このことを意識する必要があるわけです。大切なのは、まとめようとせず、“自分なりのことば”を使うようにすること。たとえば似たような表現であっても、「サッパリ」と「スッキリ」では、意味は大きく異なるわけです。

考えたことを外に出していく過程で、一般的にあまり使われない単語を消してしまうと、個性が弱くなってしまうため、そのまま書き出すようにします。そのあとで「なぜ、このような言葉をつかったのか?」の意味を考え直すことが重要です。(34ページより)

つまり、ことばをまとめてしまうと、重要なポイントが抜け落ちてしまう可能性があるということ。だからこそ、ことばづかいを正確に記録するべきだというわけです。(33ページより)

まとめないコツ3:語彙を増やす

人は自分が知っていることばを使って、物事や現象を理解します。したがって、知らないことばでなにかを説明されたとしても、「よくわからないもの」「理解できないもの」と認識してしまうことになるのです。

けれども、それでは情報として使うことができませんし、そのことばを聞いたこと自体を忘れてしまうかもしれません。

しかし、これを逆に言えば、「知っている言葉が多いほど、理解できることも多くなる」ことでもあります。つまり、語彙を増やすことで、理解できることも増やせるのです。(35ページより)

そうなれば必然的に、世の中のことをより多く、より正確に、より深く認識できるようになるはず。つまり語彙が増えると、「世界を見る解像度が上がる」というわけです。(35ページより)

特徴的なのは、伝えたい内容をわかりやすくするための事例として、著者自身の実体験も盛り込まれている点。そのため、要点を簡潔に理解することができるわけです。なんらかのかたちで「考える仕事」に携わっている方は、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2023年5月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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