『仕事のモヤモヤ・イライラを止めて自分を取り戻す 小さなルーティン』
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ストレス習慣を手放し、自己肯定感を高めるルーティン3つのポイント
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「わかってもらえない」とか「得意なことがない」とか、「がんばる理由がわからない」とかーー。それらはあくまで例にすぎませんが、ともあれ仕事になんらかの不満やストレスを抱えていらっしゃる方は少なくないはず。では、そこから脱するために、あるいはそうした状態に陥らないためにはどうしたらいいのでしょうか?
キャリアコンサルタントである『仕事のモヤモヤ・イライラを止めて自分を取り戻す 小さなルーティン』(福所しのぶ 著、あさ出版)の著者は、そのために必要なのは「いまの仕事のストレスのもととなっているストレス思考を手放し、自分らしく働くための思考を身につけること」だと主張しています。
なお、ストレス思考を手放すためには、次の2つの力を高める必要があるのだそうです。
・自己肯定感(他者と比べることなく、ありのままの自分を認める気持ち)
・メタ認知力(自分の考えや自分が置かれている状況を俯瞰的に見る力)
(「はじめに」より)
自己肯定感が高ければ、仕事で主体的に考えて動いたり、新しいことに挑戦したり、かりに失敗したとしても再チャレンジすることが可能。さらにメタ認知力が働けば、仕事のキャパシティが適切かどうかを考えたり、トラブルが起きたとき他の方法をさがしたりすることもできるでしょう。
つまり自分らしいキャリアを築くためには、この2つの力をバランスよく育てていかなければいけないということ。
本書では、その方法が明らかにされているわけです。きょうは自己肯定感に焦点を当てた第3章「自己肯定感を高めるルーティン13」のなかから、いくつかをピックアップしてみたいと思います。
1.「きょう自分ができたこと」を3つ書き出す
ここで著者が勧めているのは、少し時間をとって「きょう自分ができたこと」を3つ書き出すこと。
日ごろ使っている手帳のメモ欄や余白に書き込んでもいいそうですが、いずれにしても1週間ほど続けてみることがポイントであるようです。
しかも、必ずしも成功・達成したことだけではなく、その日の行動のなかで「がんばったな」と思えることや、「自分を大切に扱うためにできたこと」、あるいは「自分が心地よくなれたこと」なども含めるべきだというのです。もちろん仕事のことでも、プライベートのことでも、どんな些細なことでもOK。
仕事で悩みを抱えているときは、つい仕事の場面にばかり目が向いてしまいがち。しかも仕事でうまくいかないことがあると、すべての局面でうまくいっていないように感じてしまったりもするものです。
けれども悩んでいるのは、「うまくいく状態を目指したい」とがんばっているからこそ。したがって、つらいときこそ、まずはがんばっている自分を認めることが大切だということです。がんばっている自分を認めることができると、仕事の悩みで狭くなっている視野が広がり、自分を大切に扱う習慣も身についていくといいます。
・通勤途中に空を見上げたら、すがすがしい気持ちになった
・デスクまわりを整理して環境を整えたら、仕事がはかどった
・意識して休憩を入れたら、いつもより集中できた
・会議で早めに移動したら、気持ちに余裕が持てた
・解決の糸口を探してふと本を手にしたら、いいアイデアが浮かんだ
・仕事が一段落した時の自分へのご褒美を決めたら、やる気が湧いてきた
(85〜86ページより)
たとえばこのように、「自分をていねいに扱えているかどうか」という観点で探してみると、いろいろなことが見つかるわけです。小さなことのように思えて、これはとても大切なことだと著者は述べています。幅広い視点で、自分自身を大切に扱うことを意識するべきなのだと。(84ページより)
2. きょうの「優先タスク」を3つだけやり切る
このルーティンの目的は、その日に大きなゴールへと到達することではないそうです。“自分にとって大切なタスク”をその日のうちにきちんと達成する習慣を繰り返すことによって、「自分は自分の決めたことが実行できる人である」というセルフイメージを育むことを目指しているわけです。
いわば、きょうやるべきことを自分で決めて、着実に実行できたという事実を可視化することが大切だということ。
タスクは、あえて完了できる見込みが高いもの3つを挙げて、やりきってください。
ただし、3つのタスクを実行するだけで1日が終わるような内容は避けます。半日くらいで消化できる内容が理想です。
あえて半日くらいで消化できる内容にとどめておけば、突発的な仕事が入ってきても対応できます。(100〜101ページより)
自己肯定感が低い人は、他者の評価が行動の基準になっているため、自分で決断したり、一歩踏み出すことが苦手だそう。
でも「自分らしさ」や「自分軸」をつくるためには、自分自身の考えで決断し実行できることが不可欠。そのため身の回りの簡単なところから、自分で決める、決めたことを実行する習慣をつくっていくべきだということです。(100ページより)
3. 仕事を頼まれたら、「即答せず」にひと呼吸おく
自分らしく働くためには、相手の主張を受け入れるばかりではなく、自分の主張を伝えることも必要。「波風が立ちそうだから」と自己主張を避けたがる方もいらっしゃるでしょうが、本来は自分の意見や考えの表明に過ぎません。
そこで著者が勧めているのが、アサーションという適切な自己主張。自分の考えや意見を率直に伝えるとともに相手も尊重し、歩み寄るポイントを探すコミュニケーションです。
具体的にするべきは、次の3つの質問を自分に問いかけ、「引き受ける前にひと呼吸おく」こと。そうすれば、いつもなんとなくOKしている行為に気づき、コントロールできるようになるというのです。
1. 今の自分には、この仕事を引き受ける余裕があるかな?
2. この仕事は、自分にしかできないことかな?
3. この仕事を引き受けると、得られるものがあるかな?
(112ページより)
1.で自分の時間的なキャパシティを、2.で自分の能力を、3.で自分のメリットを考え、そこから歩み寄れるポイントを探し出すわけです。
当然ながらこの3つの質問をするのは、キャパシティやメリットを自分視点で考えるため。
自分の気持ちをスルーしがちな人は、その仕事を引き受けるキャパシティがあるか、あるいは引き受けてみたいかという自分の状況をまず確認することが大切だということです。(110ページより)
ストレス思考に気づけば捉え方や対処の仕方が変わり、さらにはそれを手放せば、仕事のみならずほとんどの問題が解決していく。著者はそう断言しています。
仕事のストレスという「影」から脱して明るい人生を歩んでいくために、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?
Source: あさ出版