『「若者の読書離れ」というウソ』
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<書評>『「若者の読書離れ」というウソ 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか』飯田一史(いちし) 著
◆小中の「朝読」で習慣化
巷間(こうかん)言われている俗説を著者は“ウソ”だと断言する。表層的に若者の読書習慣を推論するのではなく、各種の読書調査をもとに読書離れという言説自体が思い込みであることを論証し、その上で、読書調査で人気を集めるタイトルを自ら読み込んで内容を分析し、読まれる本の構造をあきらかにしたのが本書だ。
小中学生は「朝読」(授業前の読書活動)で習慣が付く。他方、朝読と縁のない高校生は今も昔も月平均二冊以下で、大人の平均とほぼ同じだ。読書離れではなく、もともとさほど読んでいなかったのである。本を読まない層は、若者にも大人にも常に存在することを再認識した。
人気の本の分析では、人とは違い、世間になじめないという自意識を反映した物語が、子どもの世界では逆に大衆性を帯びる現象に興味をそそられた。こんな読書を経験した大人は多いに違いない。
読書をしない若者と、深掘りして独自の世界を楽しむオタクとの、その中間にいる“ふつうの子”たちの読書の現状を偏見なく理解できる一冊になるはずだ。
(平凡社新書・1078円)
ライター。著書『いま、子どもの本が売れる理由』など。
◆もう一冊
『ケータイ小説的。“再ヤンキー化”時代の少女たち』速水健朗著(原書房、絶版)