『ミッション 私たちは何のために働くのか』
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忙しい人こそ見直したい!スキマ時間の有効活用と考える時間のつくり方
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
世界を変えてきた人たちは
何かに「突き動かされるように」生きています。
単なる自己の満足のためではなく、
ミッションを持って闘っている。
その使命感こそが、
人々の期待を大きく超え、感動を呼び、
社会を好転させる源泉になると
私は信じます。(6ページより)
『ミッション 私たちは何のために働くのか』(岩田松雄 著、アスコム)の著者はこう述べています。日産自動車を筆頭に、外資系コンサルティング会社、世界的飲料メーカー、日本のベンチャー企業、日系のおもちゃメーカー、そしてザ・ボディショップとスターバックスコーヒージャパンと、さまざまな企業を経験してきた人物。華々しい実績ですが、どの企業、どんな業界に身を置いていても、働くことについての思いは変わらないようです。
何が価値なのか? 価値はいつ、どこで生み出されているのか?
火花はどこで散っているのか?
一見華やかに見える仕事でも、それが本当に価値を生み出しているのだろうか?
火花が散る瞬間、それは価値を生み出すビジネスの本質そのものです。その職場の「ミッション」が達成されている瞬間と言い換えてもよいでしょう。(15ページより)
こうした考え方を軸とする本書の“とりあえずのゴール”は、読者の方々に「自分はなぜ働くのか」「自分はなんのために働くのか」を真剣に考え、自分のミッションを構築していただくことであるそうです。
しかし、ミッションを構築してそれを達成するためには相応の時間が必要です。ところがビジネスパーソンの大半は、つねに時間に追われているはず。そんななか、ミッションのために時間を費やすためには相応のコツが必要かもしれません。
そこできょうは第7章「ミッションを育てる時間術、勉強法、読書術」内の「時間を有効活用する7つのポイント」のなかから、著者自身が実践してきた“時間”についての3つのアイデアをピックアップしてみたいと思います。
細切れの時間を有効活用する
時間は限りある資源であり、再生不可能であり、すべての人に平等に存在するもの。同じように、通勤時間やトイレ、入浴、待ち合わせ時間などの細切れ時間もまた、誰にも当たり前のように存在しています。
また、忙しい人、つまり1日にいくつもの予定が入っている人ほど、予定と予定の間に細切れの空白ができやすくなってしまうものでもあるでしょう。だからこそ大切なのは、そうした空白を有効活用すること。
まず私は大原則として、細切れ時間をいろいろなことの整理に使っています。
整理とは、いらなくなったものを捨てることです。
私の場合、細切れの時間はメールの整理などに使います。そのために、スマートフォンをPCメールと連動させ、メールの整理を始めます。机の上やカバンの中身の整理もよいでしょう。(242〜243ページより)
大切な考え事には時間をかけたいもの。細切れの時間では、せっかくアイデアが湧き出しても思考を中断しなければならなくなることもあるからです。そんなときには記録もなかなかとれませんから、結果的になにもしなかったのと大差なくなってしまうかもしれません。そこで著者の場合、トイレや入浴などの決まったシーンでは、「お風呂ではゴルフ雑誌、トイレでは難しい本」など“テーマ”を決めているのだそうです。
なお細切れの時間のことを著者は、「あとでじっくり思考する時間確保のための時間の貯金」であると表現しています。(242ページより)
まとまった「考えごと」の時間をつくる
一方、著者はどれだけ忙しかったとしても「考えごと専用」のまとまった時間を確保するようにしているのだといいます。
できれば頭の冴えている午前中にします。これは、よほどの事態が起こらない限り動かしません。アポイントも緊急以外は入れません。いつも秘書さんには、少なくとも2週間に1回、最低3時間程度、できれば半日くらいの「考えごと専用時間」を確保してほしいとお願いすることにしていました。可能であれば、決まった曜日の決まった時間帯を充ててしまうようにすると、スケジュールを管理しやすくなります。(243〜244ページより)
戦略を練るなどの考えごとは、まとまった時間に、集中的に考え、ある程度の結論を得るまでひたすら突き詰めるべき。参考文献を検索したり、関係者に連絡をとって情報を得なければならないこともあるでしょうから、まとまった時間が必要だということです。(243ページより)
スケジュールの刻み方をパターン化する
また、曜日や時間帯によってアポイントのパターンなどを決めてしまうと効率がよくなるそうです。
人によって、頭の冴えている黄金の時間帯と、眠くなる魔の時間帯があります。たとえば、私は頭の冴えている午前中は重要な仕事に回し、午後は面談や会議など受動的なことに時間を使う。または、水曜日は会議や人と会う約束を詰め込む代わり、木曜日はできるだけ人と会わず、午前中は「考えごと専用時間」にする、といった具合です。(244〜245ページより)
空き時間ができたとき、なんとなくスケジュールを組み込むよりも、こうしたほうが全体にメリハリが効いてくるわけです。しかもそうすれば、スケジュールに追われているのではなく、自分で能動的に時間を使っている感覚になれるはず。したがって、「自分は忙殺されている」と感じている方にはとくにおすすめだそうです。(244ページより)
ミッションを持っている企業は活力があり、顧客を楽しませ、驚かせ、感動させるもの。そしてミッションを持っている人は、たとえ厳しい現実に直面しても、常に前向きで、生き生きしているものだと著者はいいます。ミッションを構築し、その実現に人生をかけ、社会をよい方向に変えるために、本書を参考にしてみるべきかもしれません。
Source: アスコム