『絶対に停まらない世界の廃墟駅』
- 著者
- Ross, David (David Southerland) /大島, 聡子
- 出版社
- 日経BPマーケティング (発売)
- ISBN
- 9784863135628
- 価格
- 2,310円(税込)
書籍情報:openBD
『絶対に停まらない世界の廃墟駅』デビッド・ロス著(日経ナショナル ジオグラフィック)
[レビュアー] 牧野邦昭(経済学者・慶応大教授)
鉄道はかつて陸上交通の花形であった。大勢の乗客や大量の荷物が集まる駅は都市のシンボルとして位置づけられ立派な駅舎が建てられ、それほどの規模が無い小さな駅も地域の人々の生活や路線にとって欠かせない存在となっていた。
しかし鉄道と駅は必要に応じて作られたものであり、必要が無くなればその存在意義を失い廃墟(はいきょ)となっていく。本書では新線の建設、自動車や飛行機の発達、鉱山の枯渇といったよくある理由のほか、国家の解体や戦争(オスマン帝国やユーゴスラビア)、原発事故(ウクライナ)によって使われなくなった世界の駅が紹介されている(日本からは旧幌内線唐松駅など三駅が取り上げられている)。
今は廃墟でも、かつて重要な役割を果たした駅の姿は、もの悲しい中にも仕事を終えた後の凜(りん)とした美しさを感じさせる。大島聡子訳。