『JRは生まれ変われるか』
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『JRは生まれ変われるか』読売新聞経済部著
[レビュアー] 牧野邦昭(経済学者・慶応大教授)
1987年の国鉄(日本国有鉄道)分割民営化から36年が経過した。この年月は国鉄が存在した期間とあまり変わらなくなっている。発足時と環境が大きく変わる中、現在のJRはどのような課題を抱えているのかを本書は追っている。
コロナ5類移行前からの連載のまとめのためコロナ禍による乗客減少が強調されているが、基本的にはJR発足時に想定しなかった日本全体の経済低迷や人口減少、東京一極集中がローカル線の赤字やJR北海道・四国の苦境を招いていることがよくわかる。国鉄の累積債務が国民負担を招いたことから鉄道に関係する国の予算は限られており、その大半は整備新幹線建設に使われる一方で並行在来線は寸断されていく。諸外国では鉄道は道路と同じく社会の重要なインフラとされており、JR各社の経営自立性を尊重しつつ国の関与を強めていく時期に来ているのではないだろうか。
JR各社は厳しい条件の中で懸命に努力している。現状に合わない制度を変えて日本全体の利害に基づく交通政策を進めるために、「国は生まれ変われるか」が問われている。(中央公論新社、1980円)