『世界でいちばん透きとおった物語』
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「作者どうかしてる」タイプの本を書いた元芸人作家が「マジでどうかしてる」と思った衝撃の作品
[レビュアー] 藤崎翔(作家)
茨城県に暮らす元お笑い芸人の作家・藤崎翔さんは、近著『逆転美人』(双葉文庫)が “伝説級超絶トリック”の作品だと評判を呼び、ヒットしている。
しかし、「すごい」「作者どうかしてるんじゃないの!?」といわれるトリックを仕掛けた藤崎さんですら、「マジでどうかしてるんじゃないの!?」と驚愕した作品があるという。
一体、どんな作品なのか。藤崎さん本人から、その衝撃を聞いた。
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どちらの作品も評判は「どうかしてるんじゃないの!?」
杉井光さんの小説『世界でいちばん透きとおった物語』(新潮文庫nex)の評判は、僕の書いた『逆転美人』が、僕にしてはヒットした時期から、時々目にしていました。
「『逆転美人』もすごかったけど、『世界でいちばん透きとおった物語』はとんでもない!」的なことをおっしゃっている読者さんがちょくちょくいるな、と思っていた時に、茨城県在住の僕が仕事で上京する機会があったんです。
せっかくだから買おうと思い、東京の大型書店に入ったのですが、その時期はちょうど、『世界でいちばん透きとおった物語』がどんどん評判になって品薄だった頃で、大型書店でも品切れ状態。
結局、多くの読書家さんたちが読んでいた時期から少し遅れて、僕も入手して読むことができました。
どうやら『世界でいちばん透きとおった物語』と『逆転美人』が、大まかにいうと共通した特徴を持った作品だということは、読書家さんたちの評判を目にしていたので、読む前からなんとなく分かっていました。
『世界でいちばん透きとおった物語』も『逆転美人』も、未読の方の目に触れるところではあまり多くは語れない、語るべきではない作品なのですが、どちらも「作者どうかしてるんじゃないの!?」という言葉を、いい意味で多くいただくタイプの作品なのです。
フリーザと同じ!戦闘力「530000」の衝撃
そして、日頃は鋭さのかけらもない、入浴や食器洗いの時に自分で自分の腕をひっかいて負傷することがしょっちゅうの鈍臭い僕ですが、一応『逆転美人』を書いておりますので、いざ『世界でいちばん透きとおった物語』を読んだ際、正直言って早い段階で「作者どうかしてるんじゃないの!?」ポイントには気付いたのです。
ちなみに、その「作者どうかしてるんじゃないの!?」度は、『逆転美人』のそれをはるかに上回っており、『逆転美人』の「作者どうかしてるんじゃないの!?」度を1万とすると、『世界でいちばん透きとおった物語』のそれは53万、ちょうどフリーザの戦闘力と同じぐらいなのです。
(ドラゴンボールを知らない人はごめんなさい。)
当然、数々の読者さんに「どうかしてるんじゃないの!?」と言われた僕ですら、それに気付いた時には、「マジで杉井光先生どうかしてるんじゃないの!?」と、心の底から思ったものです。もちろんいい意味で。
(実際、あまりに衝撃的すぎて、しばらく部屋の中を無意味にウロウロ歩き回ったと記憶しています。)
しかも、『世界でいちばん透きとおった物語』のすごいところは、その「作者どうかしてるんじゃないの!?」ポイントに気付いてしまっても、そこからが面白いことなのです。
実際、作者の杉井光先生は、もちろん大半の読者は気付かないだろうけど、僕を含めて一定数の読者がそこに気付くだろうということは見越していたはずです。
(ちなみに『逆転美人』は、そのポイントにはなかなか気付かれにくい分、もし途中で気付かれちゃったら、その後の展開がだいたい分かっちゃうタイプの作品です。)
中途半端な落とし前だったら許しませんよ
さて、これはどういうことなんだろう、どう決着をつけるのだろう、中途半端な落とし前だったら許しませんよと、多少意地悪な思いも抱きながら、僕は『世界でいちばん透きとおった物語』を読み進め、いざ真相にたどり着くと……
それはもう素敵で明快で感動的で、読者に対して非常にフェアで、数々の伏線が見事に回収された、素晴らしい結末が待っていたのです!
僕がこの文を書いている時点で『世界でいちばん透きとおった物語』の発行部数は28万部を突破したと聞いております。これだけ素晴らしい作品ですから、納得の大ヒットです。
ちなみに『逆転美人』は7万部です。
ということは、『世界でいちばん透きとおった物語』を読んだけど、まだ『逆転美人』を読んでいないという方が、全国に約20万人いることになりまして……
(ここから小声)その中の半分でいいから僕の作品も読んでいただけると非常に助かるんですけど……
(ここからまた大声)まあそれはさておき、とにかく『世界でいちばん透きとおった物語』は、とても素晴らしい、まだ手に取っていない方には全力でオススメしたい小説です!