情報の取捨選択のプロが実践する「3色ボールペン」使い分けメモ術

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情報活用のうまい人がやっている3色ボールペンの使い方

『情報活用のうまい人がやっている3色ボールペンの使い方』

著者
齋藤 孝 [著]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784866802497
発売日
2023/09/11
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

情報の取捨選択のプロが実践する「3色ボールペン」使い分けメモ術

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

情報活用のうまい人がやっている3色ボールペンの使い方』(齋藤 孝 著、フォレスト出版)の著者は高校時代からほぼ半世紀にわたり、赤・青・緑の3色ボールペンを使って勉強をし、情報を取捨選択してきたのだそうです。

ほぼ1日も欠かしたことがなく、「これなしでは生活ができない」そう。しかも1本だけだと見つからないことがあるため、手帳に挿し、かばんに入れ、本に挿し……とつねに3本を携帯。3色ボールペンを手に持っていないと、考えることも読むことも難しいのだとか。

私にとって考えることと、メモすることはセットだ。誰かの発言をメモするのではなくて、自分の頭の中で思いついたことをどんどんメモしていく。

もちろん、相手の言ったこともメモするが、相手の発言と自分の思考のインターフェース、つまりぶつかり合ったところをメモするのだ。誰かの話を聞いたときに、自分の思考がわき上がってくる。それらを3色ボールペンで書き留めていく。(8〜9ページより)

著者は「情報」のことを、自分の外を流れている川のようなものだと表現しています。つまり、3色ボールペンを活用することでそれらを自分のなかに取り込もうとしているわけです。

ただし、広大な情報の大河をすべて取り込むのは不可能。必要なのは峻別、ろ過することであり、その「ろ過機能」こそが3色ボールペンを活用する際の要なのだということです。

情報の「ろ過機能」というものを技化していくために、3色ボールペンを手に持つという習慣を持とう。そのことによって3色が「技化」してくる。

3色に切り分ける感性、脳の働き自体が技になっていくということが重要だ。(24ページより)

こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうは第2章「3色方式とは何か」に注目してみることにしましょう。

3色ボールペン:赤・青・緑の使い分け

著者の提唱する「3色方式情報術」は、「情報を読むとき、あるいはメモなどに書き留める際に3色の色分けをする」というきわめてシンプルなもの。もちろんその3色とは赤・青・緑であり、それぞれの色は以下のように区別しているそうです。

赤――客観的に見て、最も重要な箇所

青――客観的に見て、まあ重要な箇所

緑――主観的に見て、自分がおもしろいと感じたり、興味を抱いたりした箇所

(58ページより)

会議資料も、新聞や雑誌も、常にこの視点でそれぞれの色を使って線を引きながら読むというのです。書き込みをしてはいけないもの(図書館から借りてきた本や、契約書のような提出書類など)以外は、すべてこの方式で読み込んでいるそう。なお、単に線を引くだけでも、「これは」と引っかかることばを丸で囲むのでもOK。

私の場合、通常は線を引いているが、気にかかる語句が出てくると、丸で囲っておく。とくに気になる語については、ただ丸囲みするのでなく、グルグル巻きにする。さらに、一文ないしは一段落程度ここは強調したいというところには、まとめて線で囲んで、余白に○や◎をつけておく。(59ページより)

こうしておけば、あとから資料を読み返したとき、その部分が浮き上がって目に入りやすいわけです。ちなみに著者の場合、黒は必要ないと考えているようです。そのため4色ボールペンだったとしても、実際には黒は使わないのだといいます。(58ページより)

なぜ3つに分けるのか?

それにしても、なぜ2つでも4つでもなく、3つに分けるのでしょうか? この問いに対して著者は、「シンプルだから実践的」なのだと答えています。

たとえば3色ではなく12色に分けたとしたら、細分化した分だけ作業が煩雑になり、続けられなくなるはず。そこに多くのエネルギーを使うのは無駄であり、さまざまな弊害を生み出すものでもあるということです。

なぜ3つかといえば、それは私が「3」というのは人間の脳に最も適した分類単位だと思っているからである。

当然のことながら、「1」というのは分類にはならない。

では、「2」はどうか。「2」というのは、じつは危険な分類法である。善と悪、聖と俗、あるいは白と黒でも、右翼と左翼でもいいが、そういった二極構造に陥ってしまう危険性をもっている。思考がそこから発展していかない。「2」は動きが生まれにくい数だといえる。それが二分法だ。

その点、「3」には動きがある。(58〜59ページより)

たとえば「弁証法」という思考法を成しているのも、「正・反・合」の3つの観点です。中心になる命題があり、それに反対する命題があって、それをもうひとつ高次にまとめあげていく「アウフヘーベン(止揚、揚棄)という思考方法。

二分化でとどまってしまうのではなく、もう一段高い次元で矛盾を解決しようとすることで、思考に動きが出てくるということです。さらにはこの弁証法的運動を繰り返すことで、さらに別の考え方に持ち上げていくことも可能。

また、「3」というのは、記憶の単位としてじつに効果的だ。誰でも覚えられる。しかも、リズムがよい。これが4つになると、急に記憶するのが面倒くさくなる。パッと即座に判断しやすいのも「3」までだ。(63ページより)

こうした理由から、著者は「3」という数字にとてもこだわっているのだといいます。

本書でも、情報を自分のものにするコツとして、「くぐらせる」「立ち上がらせる」「編み出す」という3つの項目に分けて構成した。

この「3項目立て」を基本にすることで、あらゆる仕事の進め方が明晰になってくるはずだ。(60ページより)

3色ボールペンを使うことには、こうした理由が絡んでいるわけです。(62ページより)

著者は、身体を使ったことだけが自分の技になると考えているのだそうです。3色ボールペンを使うことで、空前の情報過多時代にあっても、フェイクな情報に流されずに自己を確立できるのだとも。そう考えると、3色ボールペンを使いこなすことの意義の大きさがわかるようにも思えます。

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2023年9月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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