部下との関係がうまくいく「ちょうどいい距離」のとり方は?

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

最強のチームリーダーがやっている部下との距離のとり方

『最強のチームリーダーがやっている部下との距離のとり方』

著者
津田 典子 [著]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784866802503
発売日
2023/09/27
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

部下との関係がうまくいく「ちょうどいい距離」のとり方は?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

管理職やリーダーとして、思ったことを部下や後輩に伝えるのはなかなか難しいもの。そのためつい消極的になってしまったり、「必要なときは部下から聞いてくるだろうから、無理してコミュニケーションしなくてもいい」などと判断してしまうことすらあるかもしれません。いずれにしても、「部下との距離が遠い」わけです。

研修講師である『最強のチームリーダーがやっている部下との距離のとり方』(津田典子 著、フォレスト出版)の著者も、これまで多くの企業の管理職・リーダーの方から、部下や後輩との距離感についての悩みを聞いてきたそう。

ただし問題のある状態を改善すべきだとわかっていても、多くの方は「現業が忙しく、新たな取り組みはできない」「どうしても、売上を上げることのほうを優先してしまう」などと考え、「コミュニケーション」という曖昧な課題は後回しにしてしまっているようです。

そこで、そうした状況を打破すべく書かれたのが本書。

誤解がないように、あらかじめおことわりを入れさせてください。

本書はコミュニケーションの改善だけを目的としたものではありません。コミュニケーションでチームパフォーマンスを上げるためにはどうしたらいいのか、結果を出せるチームコミュニケーションとはいかなるものかを解説した本です。(「まえがき」より)

そのためには「チーム力を上げる」「部下のやる気を引き出す」「部下との信頼関係を築く」という課題をクリアしていく必要があるということで、その具体的な方法について、事例を交えながら解説しているのです。

なお事例に関しては、研修の場における悩み解決の事例はもちろん、著者がANA(全日本空輸株式会社)チーフパーサー時代に行っていたチームマネジメント、採用コンサルティング会社採用リーダー職でのチームコミュニケーション法などが広く紹介されています。

つまり、どのような自社の規模、事業内容、職種に携わる方であっても、「〇〇のときは、△△のように対処すればいいんだな」と判断しやすいわけです。

そのなかから、きょうは第2章「快適距離感メソッドの土台は『マインド』」に注目してみることにしましょう。ちなみに本書のテーマである快適距離感メソッドとは、土台となる「マインド」に加え、実践に必要な「洞察力」「想像力」「表現力」という3つの力を利用して、部下との距離を縮める方法だそうです。

基本姿勢は「人としての興味関心を持つ」こと

まず最初のポイントは、部下のことを“部下として”だけでなく、“人として”も見るべきだということ。

部下として見て、仕事の進捗、成長度合い、社内での人間関係、キャリアビジョンなどに関心を示すのは、上に立つ人間として当然のこと。しかし、そこからさらに、ひとりの人間として、物事に対する考え方、性格、いま熱中していること、悩んでいること、家族、将来のことなど、“仕事以外にどんなことを考えて日々過ごしているか”まで関心を広げる必要があるというのです。

そのことに関連して紹介されているのは、著者がANAのグループリーダーだったころのエピソード。いつも明るく楽しそうに仕事に取り組んでいた部下のMさんについて、「なんだか最近はとくに明るく積極的に仕事をしているなあ」と感じたのだそうです。そこで、次のように話しかけてみたのだとか(文中の「私」が著者)。

私:Mさん、なんだか最近楽しそうだね。今日もいい笑顔でサービスできていたよ。

M:え、そうですか。ありがとうございます。

私:この調子で明日もよろしくね。ところで、最近何かうれしいことあったんじゃない? なんだろう? 興味あるなー。なになに?

M:えへへ、実は……。(58ページより)

著者によれば、この場合の“部下に送るシグナル”は「興味あるなー」のひとことなのだとか。「あなたに興味があります」ということをダイレクトに伝えているところが、部下の気持ちをとらえ、素直に「実は……」と個人的なことを開示してくれる気持ちにさせるということのようです。

とはいえ、いきなり「彼女(彼氏)でもできたんじゃない?」などと聞くのは絶対にNG。いうまでもなく、それではセクハラになってしまうからです。

しかし、その点にさえ気をつければ、部下がなにかいいことをしたとき、それをほめるだけで終わらせるのはもったいないと著者。なぜなら、ほめるタイミングは、部下との距離を縮める絶好のチャンスだから。そのため、部下に「興味関心を持つ」というマインドをつねに持って接するべきだということです。(57ページより)

部下の誤解、認識のズレの受け止め方

「いつも“話しかけるな”オーラ全開で、聞きたいことがあっても、とても聞ける雰囲気ではない。声をかけづらい」

「なんでも聞いてって言ってるわりには、聞くと迷惑そうな顔をする」(63ページより)

自分が部下からこのように思われている可能性は、往々にしてあるものです。しかし自分としては、別に話しかけられることを嫌がっているわけでも、迷惑だと感じているわけでもないはず。にもかかわらず、部下にはそう「見えて」しまっているということです。

自覚がないのですから困りものですが、とはいえ「どうしたらいいんだ? 迷惑そうな顔だといわれても、この顔は生まれつきだ」などと開きなおったところでなにも改善されません。

だとすれば、こうしたズレをどのような気持ちで受け止め、どう解消していけばいいのでしょうか?

まず、理解しなければならないのは、コミュニケーションにおいてこうしたズレが発生するのはあたりまえだということです。

「みんなちがって、みんないい」という詩句がありましたが、人は考え方や表現の仕方は皆違うので、自分が思っているように伝わらなかったとしても、「そういうこともある」のです。「そういうこともある」と思えば、ズレが起こっているという事実を冷静に受け止めることができるのです。(64ページより)

他者と向き合った際には、つい自分の尺度で判断してしまいがち。しかし実際には、生まれ育った環境も、考え方や価値観も、人それぞれ違うのです。

だからこそ、「そういうこともある」「そういう考え方があっても不思議ではない」と考えることのできる、広い視野を持つことが大切なのでしょう。(63ページより)

部下との距離の縮め方がわからないリーダーも、必要なこと以外に話しかけられない管理職も、あるいはこれから部下を持つ先輩も、本書を読めば自身が抱えている悩みを「力」に変えることができるーー。著者はそう断言しています。日々のコミュニケーションを心地よいものにするために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2023年10月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク