『サミュエルソンかフリードマンか』
- 著者
- ニコラス・ワプショット [著]/藤井 清美 [訳]
- 出版社
- 早川書房
- ジャンル
- 社会科学/経済・財政・統計
- ISBN
- 9784152102638
- 発売日
- 2023/08/17
- 価格
- 3,740円(税込)
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<書評>『サミュエルソンかフリードマンか 経済の自由をめぐる相克』ニコラス・ワプショット 著
[レビュアー] 根井雅弘(京都大教授)
◆政府の役割どうあるべきか
サミュエルソンとフリードマンは、20世紀後半のアメリカが生んだ現代経済学の巨星である。サミュエルソンとフリードマンは雑誌『ニューズウィーク』で交互にコラムを受け持っていた。両者ともノーベル経済学賞を受賞しているが、考え方は対照的だった。
サミュエルソンは、自由市場の役割は決して否定しないが、大恐慌の経験から、政府には財政金融政策を通じて経済を「微調整」し、できるだけ高い雇用を維持するという義務があると考えた。当時は「新古典派総合」と呼ばれていた。それに対して、同じ大恐慌を経験しながらも、フリードマンは中央銀行が貨幣供給量をうまくコントロールすれば経済は安定化し、政府の役割は限定的であるべきだと主張した。フリードマンの後には強力な学派が形成され、主流派であるサミュエルソンを批判し続けた。
著者はジャーナリストなので経済モデルの理解には少々物足りなさもあるが、両者の間のやりとりをこれだけ詳細に追った記録は貴重である。一読を勧める。
(藤井清美訳 早川書房・3740円)
1952年、英国生まれ。ジャーナリスト、作家。
◆もう1冊
『ケインズかハイエクか』ニコラス・ワプショット著、久保恵美子訳(新潮社)