<書評>『サミュエルソンかフリードマンか 経済の自由をめぐる相克』ニコラス・ワプショット 著

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<書評>『サミュエルソンかフリードマンか 経済の自由をめぐる相克』ニコラス・ワプショット 著

[レビュアー] 根井雅弘(京都大教授)

◆政府の役割どうあるべきか

 サミュエルソンとフリードマンは、20世紀後半のアメリカが生んだ現代経済学の巨星である。サミュエルソンとフリードマンは雑誌『ニューズウィーク』で交互にコラムを受け持っていた。両者ともノーベル経済学賞を受賞しているが、考え方は対照的だった。

 サミュエルソンは、自由市場の役割は決して否定しないが、大恐慌の経験から、政府には財政金融政策を通じて経済を「微調整」し、できるだけ高い雇用を維持するという義務があると考えた。当時は「新古典派総合」と呼ばれていた。それに対して、同じ大恐慌を経験しながらも、フリードマンは中央銀行が貨幣供給量をうまくコントロールすれば経済は安定化し、政府の役割は限定的であるべきだと主張した。フリードマンの後には強力な学派が形成され、主流派であるサミュエルソンを批判し続けた。

 著者はジャーナリストなので経済モデルの理解には少々物足りなさもあるが、両者の間のやりとりをこれだけ詳細に追った記録は貴重である。一読を勧める。

(藤井清美訳 早川書房・3740円)

1952年、英国生まれ。ジャーナリスト、作家。

◆もう1冊

『ケインズかハイエクか』ニコラス・ワプショット著、久保恵美子訳(新潮社) 

中日新聞 東京新聞
2023年10月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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