<書評>『特攻服少女と1825日』比嘉健二 著

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特攻服少女と1825日

『特攻服少女と1825日』

著者
比嘉, 健二, 1956-
出版社
小学館
ISBN
9784093891226
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

<書評>『特攻服少女と1825日』比嘉健二 著

[レビュアー] 北尾トロ(ノンフィクション作家)

◆時代の空気 記録に残す

 1980年代から90年代にかけて、全国各地に誕生し隆盛を誇った「レディース暴走族」。その多くは男子禁制を旨とし、独自のルールを作って活動。「ヤンキー少女」の憧れの的となっていた。

 本書『特攻服少女と1825日』は、彼女たちの強烈な自己主張と存在感に目をつけて創刊された雑誌『ティーンズロード』の初代編集長による回顧録であり、時代のあだ花のように盛り上がり、世紀が変わる頃には絶滅に向かう、“暴走と青春”の記録である。

 創刊当初は売れなかった『ティーンズロード』だが、「スター総長」を前面に押し出す企画でヒットを連発。表紙を飾る総長はカリスマとなり、めきめき部数を伸ばす。文系男の多い編集部が、彼女たちの心情や行動原理をわからないなりに理解しようとし、信頼を得ていく流れは、本書の読者にとっても大いに助けになるだろう。

 中には、裏社会とのつながりなど、闇の部分についての言及が少ないと思う人がいるかもしれない。でも、著者は適度にそこを描いてバランスを取るのではなく、数年間だけパッと輝き、17、18歳で引退する彼女たちのリアルな生き方に光を当てようとしたのだと思う。

 令和になって当時を振り返るにあたり、著者の筆致は冷静だ。昔は良かったとか、今の若者はだめだというような高みからの文章が一つもない。あるのは渦中にいた人間として記録を残しておきたいという思い。誰かが書かないと、かつてレディース暴走族と呼ばれる少女たちがいたことなんて簡単に忘れ去られてしまうからだ。雑誌クロニクルでありヤンキー少女の青春グラフィティでもある本書の存在意義は、時代の空気を後世に伝え、埋もれさせないことにあると評者は思う。

 さらに本書に深みを与えている要素は、誌面をにぎわせたスター総長たちのその後がフォローされている点だ。久々の再会に緊張を隠し切れない著者の気持ち、読者にもきっと伝わるに違いない。

(小学館・1650円)

1956年生まれ。編集プロダクション「V1パブリッシング」代表。

◆もう1冊

『「いつ死んでもいい」本気(マジ)で思ってた…』かおり著(大洋図書)。元スター総長の自伝。

中日新聞 東京新聞
2023年11月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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