<書評>『顔面放談』姫野カオルコ 著

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顔面放談

『顔面放談』

著者
姫野/カオルコ
出版社
集英社
ISBN
9784087880885

書籍情報:openBD

<書評>『顔面放談』姫野カオルコ 著

[レビュアー] 大塚ひかり(古典エッセイスト)

◆自虐交えた圧巻の観察眼

 「顔面相似形」なる「週刊文春」のコーナーに20年以上投稿し、何度か採用されたこともあるほど、顔の造作にこだわりのある著者による、著名人の顔面に関する本である。佳子さまと昭和天皇が似ている、いかりや長介はモデル体型、世界一の美人は2人いる…発見の連続だ。

 圧巻はたとえ。「…イジケ、融通のきかなさ、鬱積(うっせき)が、古尾谷(雅人)の魅力なのである。本人はこうした要素を、段ボールに入れて電信柱の下にそっと捨ててきたつもりなのに、家に帰ってふりかえると、クーンと鼻をならして付いてきている子犬のように、それらは、彼から剝(は)がせないのである」等の名文が満載。

 両親から顔の悪口を注がれた「陰気なわが家」の思い出が時折顔を出すのも、自虐的なユーモアが漂う。顔に指摘しやすい、目につくかたちがないため学校でからかわれず、何かと前向きな気力を身に付けた「ように」著者には映る顔が「うらやましい」というのも、納得と共に涙が出た。著者の情報源は映画がメインゆえ、映画ガイドとしても楽しめる。

(集英社・1760円)

1958年生まれ。作家。『昭和の犬』で直木賞。

◆もう1冊

『整形美女』姫野カオルコ著(光文社文庫)。美とは、幸福とは何かを問う小説。

中日新聞 東京新聞
2023年11月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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