石田三成ら「敗者の城」から巡り解説…何もない城跡や廃城を存分に楽しめる一冊

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天守のない城をゆく : 城の楽しみ方、活かし方

『天守のない城をゆく : 城の楽しみ方、活かし方』

著者
澤宮優 [著]
出版社
青土社
ジャンル
歴史・地理/歴史総記
ISBN
9784791775941
発売日
2023/10/27
価格
2,420円(税込)

書籍情報:openBD

何もない城跡、廃城の味わい方 歴史を想像する喜びを見出す術

[レビュアー] 稲泉連(ノンフィクションライター)

「城」と聞いてまず頭に浮かぶものと言えば、「天守」の堂々とした威風だろう。だが、本書が描くのはタイトルにもある通り、その「天守」のない城の魅力についてだ。

 著者は関ヶ原の戦いに敗れた石田三成の佐和山城など「敗者の城」の数々を振り出しに、大河ドラマに登場した城や現代に連なる物語を色濃く持つ全国の城跡を巡り、その味わい方を描いていく。櫓、門、石垣、堀……。他にも様々な城の機能や廃城の理由にも注目し、城主の人柄や歴史への関心を広げていく過程が興味深い。何もないように見える城跡から、いかに歴史を想像する喜びを見出していくか。天守がなくても面白い、ではなく、天守がないからこそ深まる城の本質への理解、歴史を想像する魅力を、城を探訪する自らの姿を通して解説していくのだ。

 本書では各所の城跡の多様な逸話が紹介されるが、例えば全国の廃城のありし日の姿を描いた画家・荻原一青の小伝は胸に沁みた。少年の頃に故郷の尼崎城に魅せられた荻原は、日雇い仕事をしながら「失われた城」を描き続け、「私の人生は、城に生き、城に終わる」と語ったという。

 そして、本書を貫く幹となっているのが、「文化財」の活用のあり方に一石を投じようという問題意識だ。

 2019年の「文化財保護法」の改正以後、「観光」を優先するあまり「保護」の視点が軽んじられる事例が増えているという。

〈観光目的が先走りせずに、城が文化遺産として人々に尊重され、その結果地域も活性化されることが望ましい〉

 そう書く著者は発掘の様子を「見える化」した駿府城跡、地域の人々の活動によって保存が実現した富松城跡などの事例を紹介。地域に愛され、歴史への関心を呼び起こす活用とはいかなるものかを問う。城跡の文化財としての本質をあらためて見つめ、その価値を丁寧に浮かび上がらせる提言に頷くものがあった。

新潮社 週刊新潮
2023年11月30日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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