お金持ちではないのに「お金の不安がない人」は、どうしてそう思えるのか?

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お金の不安がなくなる小さな習慣

『お金の不安がなくなる小さな習慣』

著者
有川 真由美 [著]
出版社
毎日新聞出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784620327945
発売日
2023/11/28
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

お金持ちではないのに「お金の不安がない人」は、どうしてそう思えるのか?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

生きていくうえで、お金の不安から逃れることはなかなか難しいもの。

しかし不思議なことに、世の中には「お金の不安がない人」もいるものです。ただし『お金の不安がなくなる小さな習慣』(有川真由美 著、毎日新聞出版)の著者によれば、それは、単に「お金を持っている人」を指すわけではないようです。

「お金の不安がない人」は、どんな未来がやってきても「なんとかなる」と思える人です。安心とは、お金がなければ得られないわけではありません。

たとえば、貯金がなくても仕事で得たスキルや知識があって、なにかと声をかけられる人、年金暮らしでも上手くやりくりしてゆたかに暮らす知恵のある人、そのときそのときで助け合える人間関係を築ける人であれば、お金よりよっぽど安心感があるでしょう。

お金をもつこと、ふやすことも大事ですが、まずは、自分のなかに生きるための“資産”をたくわえて、お金に選ばれる人になることが先決なのです。(「はじめに」より)

これは非常に本質的で、そして重要なことではないでしょうか? 本書の意義もそこにあります。

よくある「お金本」のように財テクや節約術、仕事術について書かれているわけではなく、紹介されているのは「お金の不安をなくし、安心して生きていくためにはどうすればいいか?」についての考え方

具体的には、賢いお金の「遣い方」「稼ぎ方」「貯め方(活用の仕方)」「人とのつきあい方」「時間の使い方」「暮らし方」「考え方」の習慣が集められているのです。

これらの習慣を重ねていくうちに、「まあ、なんとかなるでしょう」という自信がわいてくるはずだと著者は述べています。それはお金の不安を解消したいと思うとき、多くの人が望むことでもあるはず。

きょうは仕事についての考え方に触れたCHAPTER2「自分の価値をどんどん高めていく稼ぎ方の習慣」から、2つのトピックスを抜き出してみたいと思います。

「楽な仕事」より「楽しそうな仕事」を選ぶ

お金の不安の有無は、「仕事を楽しむ習慣」があるかどうかに大きく関係すると著者は指摘しています。

たしかにそのとおりで、「楽で高収入の仕事がいい」というような基準で仕事を選んでいる人は、「仕事はつらいもの」だと思っている可能性が大きいのではないでしょうか?

面倒なことを嫌い、楽なことばかりやろうとするため、能力や才能を伸ばすことができず、収入も横ばい状態。「早く帰りたい」「定年まで働きたくない」とモチベーションも低く、仕事や人間関係のトラブルがあっても持ちこたえることができないため、ストレスもたまりがち。

それではお金の不安を解消できなくて当然ですが、つまり、お金の不安を持つ大きな要因は、働きたくない、または求める仕事がないことだとも考えられるわけです。

一方、「その仕事、面白そう」「それはワクワクする仕事だ」と選んでいる人は、仕事が苦にならないもの

新しい挑戦をすることや、人を喜ばせることを楽しんでいて、意志や努力や根性に頼らず、自然に成長できるし、続けていくこともできます。(52ページより)

「お金の不安がない稼ぎ方」とは、安定したものにしがみつくことではなく、そのときどきで役割を見つけ、仕事を楽しみながら続けていくことなのです。

なお著者によれば、仕事を楽しむための方法はふたつあるようです。まずひとつは、楽しそうな仕事を選ぶこと。もうひとつは、いまやっている仕事を楽しむこと。

転職や副業、昇進、担当決めなど、仕事を選ぶときは、「楽な仕事」より「楽しそうな仕事」を選びましょう。仕事を選べない場合は、「楽しめる工夫」をしましょう。

どんな仕事でも、楽しめる要素はあるもの。「ワクワクする目標をつくる」「丁寧にやって完成度を高める」「人が喜んでくれることを、やりがいにする」など、夢中で真剣になるほど、仕事は楽しくなっていきます。(53ページより)

そもそも人は、人生の大半を仕事に費やすもの。そのため、できる限り仕事を積極的で楽しいものにする責任があるのだと著者は主張しています。それが実現できれば、おのずと充実感も生まれてくることでしょう。(52ページより)

「目先の利益」より「信頼されること」を優先する

長きにわたってお金を稼いでいく人は、「目先の利益」よりも「信頼されること」を優先するものだといいます。たとえば営業の際に相手が迷っているとき、そういう人は相手の気持ちを尊重して無理に買わせるようなことはしないそう。

すると一時的には損をするかもしれませんが、長期的には「この人は信頼できる」と思われるため、結果として多くのものを得ることができるわけです。

信頼を得られて「またこの人にお願いしたい」「この人からものを買いたい」などと思ってもらえれば、自然に応援者や協力者ができて、お金もついてくるのです。(70ページより)

一方、「目先の利益」を得ようとする人はどうでしょう?

そういうタイプは、自分が利益を出すために強引に進める、人を蹴落とす、欠点をごまかす、ずるいことをする、人によって態度を変えるというような手段を選びがちであるため、信頼を損ね、仕事も先細りになってしまうのです。

もちろん、“信頼”がお金に換わるまでは時間がかかるもの。しかし「みんなが認める信頼」として値がついたら、莫大な利益に換わることがあるということです。

大手製薬会社のヘルプデスクとして派遣社員で入社した友人は、10年ほどで数万人いるグループ企業の役員まで駆け上がりました。彼が心がけていたことは、とてもシンプル。求められたら、すぐに行って解決するまでやり切ることでした。

ほかのヘルプデスクが「就業時間なので明日やります」「3日はかかりそうです」と自分の都合で動くなか、相手の期待を超え続ける彼の仕事ぶりは評価されて、大きな仕事も任されるように。いまや大企業数社の相談役を任されているのは、「彼に頼んだら、なんとかしてくれる」という信頼にほかならないでしょう。(71ページより)

矛盾した表現かもしれませんが、利益を得ようと思うなら、利益のことはあまり考えず、よりよい仕事をするために専念すべきだということ。自分が得ることよりも、相手に満足してもらうことを先に考える。それこそが、最善で最短の道だというわけです。(70ページより)

本書の根底にあるのは、「『なんとかなる』という自信は、日ごろの習慣によって養われるものである」という考え方。

それは、お金の不安について考えるとき、意外と気づきにくいことでもあるかもしれません。だからこそ本書を通じて考え方をブラッシュアップし、本当の意味での自信を身につけたいものです。

Source: 毎日新聞出版

メディアジーン lifehacker
2023年12月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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