『書いて整える1分間瞑想ノート』
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考えずに1分間書き出す、心の安定へ導く。思考と感情を整理する「書く瞑想」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『書いて整える1分間瞑想ノート』(吉田昌生 著、フォレスト出版)の著者は、瞑想家・マインドフルネス瞑想の専門家。
多くの人の心のサポートを行う立場にあるわけですが、20代のころには自分自身の心の安寧をキープすることができなかったようです。
当時は劣等感や不安感、孤独感に苛まれ、つねにイライラしているような状態だったというのです。
そんななか、マインドフルネス瞑想が大きく変われるきっかけになったのだとか。その効果を実感できてからは大きく変わることができ、「瞑想は多くの現代人にとって必要なスキルである」とも確信したのだといいます。
つまり、そうした実際の経験に基づいたメソッドが、本書で紹介されている「書く瞑想」。
長年にわたりマインドフルネス、脳科学、心理学、コーチングを研究するなかで生まれた方法であり、シンプルかつ簡単でありながら、思考と感情を整理し、深い自己洞察、自己治癒、行動改善を行うことができるのだそうです。
最も基本的な方法は、ジャッジせずに自分の頭の中にあるものを書き出すことです。
限られた時間の中で集中的に頭の中にある考え、不安、思い、感情、気になっていることなどを書き出すことで、思考と感情が整理され、不安やストレスといったものが軽減されます。
そして、さらに頭の中から出てきたものを深掘りしたり、自分に質問を投げかけたりすることでさらなる「気づき」を生み出すことができます。(「はじめに」より)
通常の瞑想との違いは、自分の思考、パターン、癖が可視化され、それらを取り扱いやすくなること。つまりは「気づき」を「行動」に落とし込めるようになるということ。
日常的にノートを書いていくと、自分自身の思考やいつも抱いている感情のパターンが見えてくるもの。その結果、「なにを手放し、どのように行動していくべきか」という具体的な行動改善につなげていけるというのです。
きょうは第2章「『書く瞑想』の基本」に目を向けてみましょう。
ステップ1「頭の中を書き出す」
「書く瞑想」の第一段階は、「頭のなかにあるものを書き出す」1分間のフリーライティング。
まず呼吸を整え、頭に思い浮かんだこと、感情、気になっていること、不安なこと、楽しみなこと、やらなければと思っていることなど「いま、頭のなかにあるもの」を1分間、考えず、手の動きを止めずに書き続けるわけです。
・最近、気になっていることは?
・最近、悩んでいること、不安になっていることは?
・今、自分が本当にしたいことは?
・今、感じていることは?
・今日考えたいテーマは?
(63ページより)
コツは、頭のスイッチをオフにして、考える時間を置かず、よい悪いといった判断や編集もせず、直感的に1分間書き出してみること。
誤字や脱字、文章のうまさや読みやすさも気にせず、ひたすら手を動かしてありのままを書き続ければいいようです。
言葉が出てこなくても、定期的に書き出すことで、自分の内側の感情や考えに気づいて、言語化する力が高まっていきます。
最初は1分で1〜2行くらいしか書けない方も、1分間で素早く書くことを意識して続けると、5行以上書けるようになります。(67ページより)
できれば、気をそらすものがない個人的な空間で行いたいところ。誰かと一緒に行う場合も、心理的な安全性が確保されている状況で行うとよいそうです。(62ページより)
ステップ2「ひとつ選んで深掘りをする」
1分間書き出したあとは、それを眺め、新しく感じたことを書いていくステップ。そして、いくつか出てきたなかからひとつを選び、さらに深掘りするわけです。たとえば最初の1分間で、
・仕事のこと
・職場の人間関係のこと
・家族との関係のこと
・将来やりたいことと不安
・お金のこと
(68ページより)
などが出てきたとしたら、ステップ2ではここからとくに気になるものをひとつ選び、再度1分間「深掘りの書く瞑想」を行うのです。
ただし、ここではただ書き出すだけではなく、より具体的に書き出すことが大切。
・気になっていることは何か
・どういうことがあったか
・どうすれば良かったと思っているか
・どうするつもりなのか
・最悪の場合どうなってしまうか
・どうなったら最高だろうか
(69ページより)
などを1分間書き出し、書き終えたらゆっくりと深呼吸を5回。
ひとつのテーマを深掘りしていくと、奥深くにある本質が見えてくるもの。そこから具体的な解決策や真理にたどり着くこともあるわけです。(68ページより)
ステップ3「テーマ×質問する」
ステップ1とステップ2を毎日続けていくと、やがて同じようなことばばかりが浮かんでくるようになるかもしれません。
そんなときに試してみるべきは、「自分に質問すること」、「自分が本当にやりたいことは?」「今週やるべきことは?」など、1分間書く瞑想をするテーマを設定し、自分に質問するのです。
このステップにおいて答えを出すことよりも大切なのは、考えるプロセスや、自分自身と向き合う姿勢。同じテーマについて自問しながら繰り返し考えることで、自分の考えが深まり、よりしっくりくることばで表現できるようになるということ。
たとえそのときに答えが出なかったとしても、無意識のレベルで脳は答えを探し続けているそう。したがって、日常生活のふとした瞬間に「あ、そうか」と閃くこともあるといいます。(74ページより)
本書を最後まで実践することで、「書く瞑想」の効能を実感できるはずだと著者は太鼓判を押しています。特別な道具は必要なく、ノートとペン、そして自分自身に対するオープンな心があれば始められるのですから、試してみる価値はありそうです。
Source: フォレスト出版