『路上のセンス・オブ・ワンダーと遥かなるそこらへんの旅』
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<書評>『路上のセンス・オブ・ワンダーと遥(はる)かなるそこらへんの旅』宮田珠己(たまき) 著
[レビュアー] 平田俊子(詩人)
◆何の変哲もない街に感応
タイトルが長い。26文字もある。ほとんど短歌だ。「センス・オブ・ワンダー」はレイチェル・カーソンの本の題名に由来する。カーソンの「ワンダー」は「wonder」だが、宮田さんのは「wander」つまり散歩で、「何の変哲もない街に感応できる感性」のことらしい。
旅好きの著者はコロナ禍の間、旅行するかわりに近所を歩いた。散歩の面白さに気づき、編集者と都内を歩くようになった。1年に及ぶ「そこらへんの旅」をまとめたものが本書である。気ままな街歩きのようで事前のリサーチは忘れない。公園の遊具、暗渠(あんきょ)、鉄塔、無言板など見るべきポイントを押さえて歩く。もちろん新たな発見もある。
ある時は目白から哲学堂公園へ、ある時は浅草から北千住へ、毎回かなりの距離を歩く。真夏の散歩は苦行のようだ。長いタイトルは2人が歩いた距離の長さを表しているのかもしれない。わたしもよく歩くが、知らない場所も多かった。気になるところをチェックしながら、ページの上を愉快に散歩した。
(亜紀書房・2200円)
作家、エッセイスト。著書『いい感じの石ころを拾いに』など。
◆もう1冊
『江戸の坂 東京の坂(全)』横関英一著(ちくま学芸文庫)