『情報公開が社会を変える』
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<書評>『情報公開が社会を変える 調査報道記者の公文書道』日野行介 著
[レビュアー] 関口威人(ジャーナリスト)
◆民主主義高める武器に
著者は元毎日新聞記者で、東京電力福島第1原発事故の県民健康管理調査における「秘密会」の存在や、原発再稼働に向けた避難計画のまやかしなどを暴いた調査報道で知られる。その取材の“武器”とした情報公開請求の意義やテクニックをまとめた一冊だ。
同業の私もこの制度における「不開示」や「黒塗り」に悩まされてきた一人なので、著者の明かす具体例はとても身近で役に立つ。ただ、まったく一般の人にこの制度に興味を持ってもらい、行動を促すには少々ハードルが高い。著者もそれは承知の上で、まずは何か役所の問題に直面している住民や、長年運動に携わっている市民にこの制度を“武器”として手に取ってもらい、民主主義のレベルを一段高めたいと願う。
そうした意味で著者が実行してきた役所との駆け引きはハイレベルだがスリリングだ。それを自ら「公文書道」と名付け、調査報道を続けるためにも新聞社を退社したという。誠にジャーナリズムとは生き方だと感じる。
(ちくま新書・968円)
1975年生まれ。ジャーナリスト・作家。
◆もう1冊
『社会を変えた情報公開 ドキュメント・市民オンブズマン』杉本裕明著(花伝社)