『世界はラテン語でできている』
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豊富な話題で楽しむラテン語
[レビュアー] 田中秀臣(上武大学教授)
会社を辞め、数年ぶらぶらしてから大学院に入った。人生の先が見えずヤバいな、と思っていた。ふと大学の図書館の入り口をみると、ラテン語らしき文字が彫られていた。もちろん僕には一切読めない。その時の印象では「この門に入るもの一切の希望を捨てよ」みたいに感じた。ともかく図書館に入るたびにそう勝手に思ったものだ。学問って厳しいな、と空想ラテン語がそう僕に教えていた。
ラテン語さん『世界はラテン語でできている』は、題名からもわかるように、身近なラテン語から、ラテン語と世界各国の文化や歴史、そして日本とのかかわりなど、豊富な話題で楽しませてくれる。
例えば、『ハリー・ポッター』シリーズは、ラテン語の意味深な人名や呪文が多い。かのセブルス・スネイプ先生の「セブルス」はラテン語で「厳しい」という意味で、そのまんまのイメージだ。また呪文の「クルーシオ」は相手を「苦しめる」で、日本語の語呂もよい。
マンガ、アニメ、ゲームなどにもラテン語は頻出している。だから僕が抱いていた厳しい感じは微塵もない。実に親しみやすい言葉だ。また日常生活で、ラテン語を見つける楽しみも本書から得るだろう。
本書には冒頭の図書館の言葉も出てきて驚いた。「知恵とは何か、読んで学べ(QUAE SIT SAPIENTIA DISCE LEGENDO)」。この含蓄ある言葉が、最初からわかっていれば、もうちょっとましな学者になったかもなあ。