『世界史を変えた薬』
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【話題の本】『世界史を変えた薬』佐藤健太郎著
[レビュアー] 磨井慎吾
■歴史の“妙薬”を一般向けに解説
第二次大戦中の1943年、英首相チャーチルは肺炎で倒れた。当時、肺炎は今よりずっと死亡率が高い病だった。このとき優れた抗菌剤であるサルファ剤が開発されていなければ、高齢のチャーチルはそのまま死去し、われわれの知る大戦史は違ったものになっていたかもしれない。
マラリアの特効薬キニーネは、ヨーロッパのアフリカ植民地化を大いに助けた。一包の薬が、実は歴史の流れを左右する役目を果たしていたことは十分ありうる。そうしたユニークな視点から、モルヒネ、サルバルサン、ペニシリンなど歴史に名を残す著名薬について、サイエンスライターが一般読者向けに解説したのが本書だ。
10月に初版1万3000部でスタートし、現在3刷1万8100部と化学本としては大変好調。
終章は日本人のエイズ治療薬開発の話で結ばれている。担当の高月順一さんは「刊行が大村智さんのノーベル医学・生理学賞受賞にギリギリで間に合わなかったのが残念。そのため、2刷からは大村さんについて書いた小冊子をはさむことにしました。ネットでも『現代ビジネス』の記事として無料公開していますので、初刷を買った人もぜひ」と話している。(講談社現代新書・740円+税)
磨井慎吾