“キレる中高年”の増加 衝動的な行動に走りがちなワケ
[レビュアー] 碓井広義(メディア文化評論家)
往来で自分にぶつかってくる“歩きスマホ”の男。その手の中にあるスマホを叩き落としたくなること、ありませんか? 私はあります。しないけど。
最近、キレる中高年の姿を目撃するのは珍しいことではない。人身事故で電車が不通となったホームで駅員を罵倒する40代。金融機関の窓口や病院の待合室で、待たされたと大騒ぎする50代。現代ほど中高年がキレやすい時代はない。
心理学者である著者は、中高年が衝動的な行動に走りがちな理由として、「人生の折り返し点」を迎えたことを挙げる。仕事や家庭をめぐる「これでよかったのか」という不安。「何とかしなければ」という焦り。時間もお金も能力も、常に足りていないような憤り。さらに、他人からバカにされるのではないか、軽くみられるのではないかという「見下され不安」も、中高年心理の特徴だという。
溜め込んだストレス、負のエネルギーが突然噴出するのが中高年のキレ方だとして、どうすべきなのか。まずは本書を通じて敵の正体、つまり衝動と不安のもつ意味を知ることだろう。
その上で著者のアドバイスは、「役割に徹する」。自分という個人ではなく、役割として対処すること。また、「許せない!」とキレたりしないよう、「価値観の棚上げ」をする。相手が同じ土俵にいると思えば腹が立つ。ちょっと見方を変えてみるのだ。歩きスマホにキレないためにも。