『最後のテレビ論』
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放送作家が語る、伝説のバラエティー番組の裏側と個性的なテレビの裏方たち
[レビュアー] 碓井広義(メディア文化評論家)
職業としての「作家」はイメージできるが、「放送作家」はやや心もとない。一体、何をする人なのか。主戦場はバラエティー番組だ。新番組の企画はもちろん、具体的なネタを出したり、構成台本を書いたりする。番組責任者であるプロデューサーにとって、大物チーフ作家は頼れるブレーン的パートナーだ。
著者は『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)や『SMAP×SMAP』(同)といったヒット番組に携わってきた放送作家だ。加えて漫画『ONE PIECE』の映画版や、放送が終了したばかりのドラマ『離婚しない男』(テレビ朝日系)の脚本なども手掛けてきた。
そんな著者が今年3月末に放送作家を辞めた。昨年秋に宣言し、仕事の整理など準備を進めてきたのだ。本書の上梓も、その一環だと言っていい。32年に及ぶ放送作家体験が凝縮された一冊となっている。
大きな読みどころは二つある。まず、ヒット作の裏側だ。たとえば、企画書を見て一番ワクワクしたという『¥マネーの虎』(日本テレビ系)。クイズ番組の賞金は上限が200万円というルールを、「投資バラエティー」という新機軸で突破していく。また、一問一答が当たり前だったクイズ番組に逆らって、複数の問題が常に画面に表示されるようにしたのが、『Qさま!!』(テレビ朝日系)の「プレッシャーSTUDY」だ。視聴者が一瞬も目を離せない、新しいタイプのクイズとなった。
もう一つは、著者が一緒に仕事をしてきたテレビの裏方たちだ。『SMAP×SMAP』の「BISTRO SMAP」に高倉健をゲストとして招こうと、1年間に50通の手紙を送ったプロデューサーがいる。『24時間テレビ』(日本テレビ系)のエンディングで、定番の曲「サライ」の後に「世界に一つだけの花」の大合唱を仕掛けたマネージャーがいる。
伝説を作ってきたのは、常識を疑い、壊していく熱狂の人だ。