大正時代の「日本死ね!!!」はさらに過激「村に火をつけ、白痴になれ!」女性アナキストの評伝が話題

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 5月1日NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」に『村に火をつけ、白痴になれ――伊藤野枝伝』(岩波書店)の著者でアナキズム研究者の栗原康さんが出演した。匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」で話題となった声を上げる女性の姿を連想させる、ウーマンリブの思想家についてたっぷりと語られた。

■アナキスト伊藤野枝

 この作品は大正時代のアナキスト、ウーマンリブの元祖と称される思想家・伊藤野枝の評伝だ。栗原さんは同書の中で伊藤野枝のことを「ヤバイ、かっこいい」と何度も書いており、番組では学生時代から大ファンだったと告白した。また栗原さんは「無政府主義」とも訳されるアナキズムについて、「人が人を支配しない状態をいかにつくっていくのかという考え方。国家や企業に頼らず、自分たちの力で生きてゆく道はあるんだぞと示していこうとする。それがアナキズムと呼ばれています」と解説した。

■反骨の人生

 野枝は10代のころ縁談をもちかけられるが、激しく拒否。これが後の反骨の人生を決定づけたと栗原さんは解説する。しかし無理やり連れて行かれ結婚をさせられるも、たった9日間暮らしただけで結婚相手の家を飛び出した。そして青鞜社を立ちあげていた思想家の平塚らいてうに助けを求め、その文才が認められる。そこから野枝は筆一本で結婚制度や社会道徳に立ち向かったと栗原さんは述べている。

■内務大臣に「私より弱い」

 その後大杉栄と交流を持った野枝は、大杉が拘留された際、当時の内務大臣後藤新平に怒りに満ちた手紙を送った。栗原さんはその手紙を評し「巻紙で全長4メートルはあったといわれています。警察に行っても埒が明かないのであれば一番エラい人に手紙を書けばいいんだと考えた。またこの手紙がすごい。手紙の始まりは『前置きは省きますが、私は一無政府主義者です』とあり、そのあと延々と抗議は続き、最後に『あなたは一国の為政者でも私より弱い』と書く。これがかっこよさですよ」と大臣にも啖呵を切る野枝を賞賛した。

■ひとつになってもひとつになれない

 栗原さんは野枝の思想をひもとき、「結婚制度は奴隷制度」だという考え方や、奴隷側が仕える事に生きがいを見いだしてしまう「奴隷根性」という野枝の言葉を紹介した。栗原さんは野枝の恋愛論から「ひとつになってもひとつになれないよ」との言葉を引きながら、結婚をしても男女がお互いを異質な存在として見つめ合うことで、そこからより生き方を見いだすことができる、と野枝の思想を解説した。

■保育園落ちた?

 栗原さんは伊藤野枝の生き方や思想は今と繋がっていると語る。「30代40代のお子さんを抱えた女性は息苦しさを感じていると思う。子どもがいたら女性は子どもの面倒をみていなければいけない。本当は働きたいけど保育所がない、そんなときに今のお母さん方は本気で怒り始めてる。野枝は本気で全力で怒って、仲間を増やしていった。そういう生き方は今現在の女性たちにも参考にしてもらえる思想・生き方なんじゃないのか」と語りインタビューを締めた。

■ネット上で話題

 同書に対しネット上では「100年前の話じゃない、今起こっている事ではないか」「やばいくらい面白い」「ノエ最高。なんてスカッとくる生き方なんだろう」との声が並んでおり今の時代にも刺さる生きざまだと話題となっている。

 NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」は毎週日曜6時40分頃に放送。聞き手は高市佳明アナウンサー(43)。コーナーはNHKのウェブサイト(http://www4.nhk.or.jp/r-asa/340/)でも聞くことができる。

Book Bang編集部

Book Bang編集部
2016年5月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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