「京都人」の特権意識は歴史しか誇るものがないから ベストセラー『京都ぎらい』の著者語る

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 久米宏さん(71)が書店店長、壇蜜さん(35)が書店員となり、毎回話題の本を取り上げるBS日テレの番組「久米書店」に6月12日、『京都ぎらい』(朝日新聞出版)の著者・井上章一さん(61)が出演した。井上さんの語る京都のいやらしさに久米さんと壇蜜さんがあっけに取られる一面もあった。

■嵯峨は「日本海やんか」

『京都ぎらい』は「新書大賞2016」大賞を受賞。昨年9月の発売から現在では20万部を超えるベストセラーとなっている。同書では京都府のなかには歴然とした地域差別があり、京都のごく一部の街中、洛中以外を「京都」とは認めない人々(「洛中人士」)がいることが暴露されている。井上さんは嵯峨で育ち現在は宇治在住。子どもの頃から何度となく洛中人士に見下されてきたと語る。井上さんはその極端な例として高校時代のエピソードを明かした。嵯峨から通っていることが洛中の同級生に知られると、「日本海やんか」と言われたという。京都から日本海にまで抜ける長い山陰線のほんの入り口にあたる嵯峨でも、洛中から外れてるというだけで日本海と同じだという扱い。それほど「洛中とそれ以外」という特権意識があるということが窺われるエピソードだ。

■どこにでもある問題なのか?

 久米さんは「関西は京都と大阪の対抗心がすごいじゃないですか」と話を振ると井上さんは「東京の方でも千葉や埼玉を愚弄する度合いを考えるとね。神奈川の人も千葉あたりの人といっしょにされたくないとか妙な話をよく聞きますよ」と指摘。壇蜜さんは「広がれば日中韓みたいな感じになるんでしょうか」とスケールを変えてみれば国家間にも当てはまるんじゃないかと疑問を口にした。

■プライドがエスカレート

 ただ井上さんは京都の街中の人は「そんなに偉そうにできる実態があるとは思ってないと思う」という。似たような例としてブラジルにおけるリオデジャネイロ、イタリアにおけるフィレンツェなど過去に栄えたものの今は別の都市の後塵を拝している都市をあげ、洛中も同じで歴史しか誇るものがない街になりかけている、と述べた。それらの「本当は偉そうにできなくなっているからこそ誇り高くなってゆく街」の比較研究ができたらいいと、洛中人士の誇りは研究対象になりえると語った。久米さんは「プライドがエスカレートしてゆくんだ」と納得していた。

■ほんとは好きなくせに

 同書は東京を除くと京都での売れ行きが一番よい。しかし井上さんは京都の三条烏丸の書店で見たPOP(書店で本棚に飾る立て看板)に「やられた」と思わされたという。そこには「本当は好きなくせに」と書かれていた。井上さんは「阪神ファンは集まると阪神の悪口ばかり言う」や「好きな女の子には意地悪をする」などの例をあげ、痛いところを突かれたと語り、書店員の指摘が図星だったかのように笑っていた。

■京都がよくわかる本

 また「本のギョーカイ新聞」のコーナーでも井上さんが「京都がよくわかる本」として3冊を紹介した。京都の内乱である「応仁の乱」が日本史上最大の分岐点であると主張した『日本文化史研究』内藤湖南[著](講談社)を「京都の先生らしいお仕事をなさっている」と薦めた。また衰えた王朝文化を市民が偲び、受け継いだと指摘した、と『京都』林屋辰三郎[著](岩波書店)を紹介。そして江戸時代の初めに王朝文化はデカダンスを迎え、それを味わい深く描いたのが『洛中生息』杉本秀太郎(筑摩書房)だと紹介した。

 その日の編集者が担当した本を売り込む「蜜読」のコーナーでは、壇蜜さんの書き下ろしエッセイ『どうしよう』(マガジンハウス)がとりあげられた。

久米書店 ヨクわかる!話題の一冊」はBS日テレにて毎週日曜18:00から放送中。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年6月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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